■リヴァイアサン大祭2012『Amber color wonderland』
「わ〜! 美味しそうなお菓子がいっぱいです!」アイシアが瞳をキラキラ輝かせて歓声をあげた。
ここは、星霊リヴァイアサンの影響で甘い蜜の流れる川のほとり、甘い匂いが幸せな気分を誘う一夜限りのハニーバザール。
「はい……」
メイベルは小さく頷いた。あまり表情が変わらなく、感情が分かりにくいメイベルだが、この楽しげな雰囲気を充分満喫している。「美味しいお菓子が沢山ですよ」と、アイシアを誘ったのはメイベルなのだ。
「あれ? アイシア?」
お菓子を買うほんの少しの間、目を離した隙にアイシアがいなくなっている。
(「探さなくては……」)
まだそんなに離れていないだろうと、メイベルは周囲をきょろきょろと見回した。
「あれも、おいしそうです♪ これもたべたいです♪」
アイシアは、瞳を輝かせながら目に映る全てに忙しく目移りする。
「……メイベル?」
どれから食べましょうか、と振り向いたアイシアは、そこにメイベルがいないことに気付いた。
アイシアがきょろきょろと辺りを見回していると、白い髪を揺らしてメイベルが小走りに駆け寄ってくる。
「どこにいってたんですか?」
アイシアは、はぐれてしまった事に全く焦った様子もなく、きょとん、と尋ねた。
「ちょっとくらい待っててくれても……アイシア?」
少しだけ息を弾ませているメイベルは、先程買った棒つき飴に注がれる視線に気付く。
「それ、なんですか? ちょっと、食べてみたいです! ……だめですか?」
「だ、ダメですよ、これもう私、口つけちゃいましたし」
無邪気に笑いかけるアイシアに、メイベルは少し慌てて拒否した。
「? 口をつけたら食べれなくなるんですか?」
アイシアは、不思議そうに首を傾げながら、しょんぼり項垂れる。
(「関節キスとか気にしてる私の方がおかしいんでしょうか」)
アイシアを見てると、そんな気がしてきたメイベルは「じゃあ、はい」と飴を差し出した。
「……くれるんですか? メイベル大好きです!」
アイシアは満面の笑みを広げて、美味しそうに飴を舐める。
(「かわいいな……」)
「はぐれちゃいけないし、手を繋ぎましょうか」
メイベルは、嬉しそうに飴を舐めるアイシアを微笑ましく思いつつ、手を差し出す。
「まいごになったらだめですよ、メイベル」
アイシアは、にこっと笑ってメイベルの手を繋いだ。