■リヴァイアサン大祭2012『いつか運命の人と踊る為……練習中』
世界が等しく雪と祝福に包まれるような日。リヴァイアサン大祭のその日、人々はそれぞれ大切な人と過ごす。
贈り物を用意したり、パーティで盛り上がったり、二人きりで楽しんだり。恋人同士に限らず、その過ごし方もどの街でも誰でも自由だ。
グリッター村の一軒家に住むクィは、大切なお友達ルーシアの為に互いにプレゼントを用意した。
一方のルーシアもクィの為にプレゼントを用意した。
誰かを想ってプレゼントを用意するのも、それを交換するのもわくわくするし、とても幸せな気持ちだ。
「開けてみて」
「うん」
二人で包みを開いていくと偶然にも素敵な衣装だった。
ルーシアからクィへ贈られたのは春の一番最初に咲くと言われるプリムラをイメージした白を基調とした可憐なドレス。
素敵なレディになるため練習中のクィにぴったりの可愛らしさで、漆黒の瞳と髪によく映え可愛らしい。
クィからルーシアへ贈られたのは、影のように薄黒い布地を幾重にも重ねた瀟洒なフリルドレス。後ろは長い裾だが前部分が太腿を露わにする短さのため、ホットパンツも付属した一品だ。
吸いこまれそうな青い瞳、輝く銀髪と抜群のスタイルを際立たせるデザインが美しい。
相手のことを想って選んだことがわかって二人とも嬉しくなる。
「着せてあげるわ」
「私も!」
衣装を着せあいっこすれば、まるでお伽噺に出てくる仲の良いお姫様のよう。姉妹のような、あるいは幼馴染のような。
いつの世もドレスは女の子の憧れ。
女の子はお姫様で、レディで、ふわふわした甘いものと夢とで出来ている。
ドレスを着たらダンスをしなきゃ。
レディたるものそれは必須項目だ。
エアリーな猫っ毛を躍らせるクィはふと思い出した。過去に何度もダンス中に相手の足を踏んでしまった失敗の数々を。
だからクィはルーシアにお願い、とダンスの相手を頼んだ。
「クィ、上手く踊れるようになりたいの」
相手の足を踏んじゃわないように。
素敵なレディになりたいから。
小さくても尊敬に値する少女のために、ルーシアは任せてと微笑んだ。
いつか運命の人と踊るため。
未来の自分は現在の自分よりももっと魅力的なレディになっているといいな。
クィは、春告げのプリムラ・シネンシス。
ルーシアは、月下の妖精。
リヴァイアサン大祭の夜、二人は雪の中舞うお姫様だった。