■リヴァイアサン大祭2012『Tous les deux.』
恋人として過ごす二度目のリヴァイアサン大祭。年に一度の大祭とあってか、街は喧騒に包まれている。その騒がしさから逃れるように、二人は郊外へと散策に出かけていた。
「今年も、残すところわずかだね」
「そうね。……今年も、激動の一年だったわ」
二人で交わす他愛もないお喋り。グスタフの言葉にエレナが頷く。二人の会話は、この一年が互いにどのようなものであったか、その確認でもあった。
激動の一年だった。
互いに背中を預け、戦い抜いた日もあった。二人の想いを重ね、寄り添った日もあった。
本当に激動の日々が繰り返されていた。
命を賭け、戦い、守り、共に寄り添い、今日まで生き抜いてきた。
そう。だから、今、二人は一緒にいられる。記念すべきこの大祭を二人で過ごす事が出来たのだ。
風が出てきた。雪景色の中の夜気はそれなりに、冷たい。
「くしゅん」
エレナのくしゃみに、グスタフが驚いた様に目を見開く。
「大丈夫? ……そろそろ、戻ろうか」
「うん。そうね」
その提案に頷くエレナ。二人が今までの道を戻ろうとした時、空を舞う星霊リヴァイアサンの姿が、二人の上空を通過していった。
街を白く染め上げる雪が、二人にもまた舞い落ちる。傍らの小川を流れる甘い蜜のいい香りがする中、二人はすっかり足を止めて、幻想的な夜空を舞う星霊リヴァイアサンの姿を見上げていた。
はらりはらりと舞い散る雪。
その中で楽しげに舞うリヴァイアサン。
雪と星霊のダンスはまるで、グスタフとエレナ、二人を表しているようで、二人を祝しているようで。
その様子を見上げていたエレナを不意に、グスタフが抱きしめる。背後から包んだ彼女の身体は夜気の為か、それとも自身がどことなく高揚している為か、とても冷たい。
自分の熱が彼女に伝わり、染みこんでいくような気さえ覚える。
そのエレナの手がグスタフの手に重ねられた。
腕の中で、ニコリと彼女が微笑む。
二人とも無言のまま、視線を交わし、そして祈る。誰にという訳でもない。強いて言うならば、今、互いの熱を交換する相手に対してだった。
互いの想いは、祈りは同じもの。
来年もまた、こうして共にいられますように。
いつまでも、二人でずっと……。