■リヴァイアサン大祭2012『ふたりのたいさい 安らぎと緊張の夜』
一年にいちどのリヴァイアサン大祭は二人きりで過ごそう。温かに部屋を飾って、君の隣で、この一年の色々な話をしよう。「なぁキノコ」
たわいのない会話の途中、ことんと肩に落ちてきた感触にエクシエクは言葉を切った。温かな重み。微かな呼吸音。
(「えっ」)
彼はややおそるおそると腹を括って視線を横にずらした。事態を把握する。そこにはエクシエクの肩に頭をあずけてすぅすぅと可愛らしい寝息をたてるキノコの姿があった。
(「ええええええっ?!」)
エクシエクは心の中で絶叫する。あまりに突然の事態だったから、彼が驚きのあまり硬直して、思わずドキドキしてしまったとしても誰も責められまい。更に恋人に見とれてしまったとしても、非難するものは居ないはず。
キノコはふわふわと白いふちどりのついた真っ赤な衣装を身にまとっている。同じデザインの三角帽子と一揃いになったその衣装をリクエストしたのはエクシエクだった。大きく開いた襟や裾の短いスカートからは、キノコの豊かな胸や白い太ももが見えてしまっていたりもして。
(「もしかして、今ならキスできるんじゃないか……?」)
あまりに安心しきった、無防備な恋人の姿に、エクシエクはちょっぴり邪なアイデアを思いついてしまう。邪と言えば他にも色々できそうなものだが、それをしないのが恋愛にはちょっぴり奥手な部分もあるエクシエクらしい所だ。
心地良さそうに寝息をたてるキノコを起こさないようにそっと肩を掴んで自分から離し、エクシエクは正面から彼女の顔を覗き込む。小さな唇がとても可憐で、思わずゴクリと唾を飲み込んだ。ドキドキと激しく高鳴る心臓をなだめようと息を吐いて、吸って。
(「思い切って……!」)
その時、至近距離でぱちりとキノコが目を開けた。
「何じゃ。どうしたんじゃ、エクシエク」
全くいつも通りの口調である。
エクシエクは、うろたえた。
「ぅっキノっいやおはよう何っでもっその……!」
寝ている間にキスを……などと考えてしまった後ろめたさで、誤魔化そうとするもしどろもどろ。気まずさに目を逸らした瞬間、やわらかな感触が彼を捕らえた。キス。
「……キノコ……?」
思わず目を見開けば、可愛い恋人がにこにこと笑んでいる。
「大好きなのじゃよ、エクシエク」
突然のキノコからのキスに驚くエクシエクに、キノコはそう言って大輪の笑顔を送った。