■リヴァイアサン大祭2012『輝ける光の中で』
陽の光を受けてきらめく氷のダンスホールには紫色の花が咲き誇っていた。情熱的な音楽には、ボリュームのある裾が蹴り上げられて、ふわりと広がり、大輪の花を咲かせる。ゆったりとした曲調になると、しっとりと花は揺れた。
胸元の大きく開いた紫のオールドドレスを纏ったラサティは、差し込む陽射しをスポットライトに、踊りと笑顔を輝かせていた。
「あちらで少し休憩しませんか?」
優雅な立ち振る舞いで、輝ける大輪の花を引き立てていたタンドリーは微笑んで手を差し出す。
「そうですわね」
ラサティは花のように優雅に微笑んで、タンドリーの手を取った。
タンドリーがエスコートして辿り着いたのは、薔薇の庭園が見えるテラス。
「綺麗なところですわね」
ラサティが、舞い散る雪の白と鮮やかな薔薇の色彩のコントラストに感嘆の声を漏らす。
(「ここで、キス位かまさないと男が廃るでしょう」)
ムードを盛り上げて、いけるトコまでチャレンジ! と、内心意気込むタンドリー。その額を、つん、と軽くラサティの指がつついた。
「貴方の野心的なところは嫌いじゃないわ。もう少し上手に隠せたら素敵なのにね」
(「隠せきれないところも、いいところだけれど」)
タンドリーがいたずらに微笑みながら、右手を差し出して軽くウィンクをする。
「手強いなぁ」
苦笑したタンドリーは、差し出された右手の甲に、うやうやしくキスを落とした。
「ふふ……」
ラサティは満足そうに微笑む。タンドリーは、そのまま右手を引き寄せて、優しく抱きしめた。
(「抱きしめられるくらいならいいかな……」)
ラサティは余裕のある笑みを広げる。
このままいけるのでは! と顔を近づけたタンドリーの唇にラサティの細い人差し指がそっと触れる。
「キスはダメよ。ここで魔法がとけたら大変でしょ?」
ラサティは、もう一曲、踊りません? と微笑んでタンドリーの手を取った。
タンドリーは、ラサティの耳元に唇を寄せ、
「でも、そんな君が大好きだよ。今日は選んでくれて有難う。また、いつでも呼んでね?」
耳元で囁く。
「……次は、逃がさないけど」
ラサティの耳元から唇を離し、ダンスホールへと歩き出したときに、小さく呟いたタンドリーの声がラサティに届いたかどうかは本人のみが知る――。