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2人でリヴァイアサン大祭

フルスロットルなピュア駄犬・カプリ
切り裂いた夜明に佇む・シェーレ

■リヴァイアサン大祭2012『暖かな時間』

 飛び回るリヴァイアサンはエルフへイムにしんしんと雪を降り募らす。
 そんなリヴァイアサン大祭の、森でのお話。

 日も落ちてしまい、時折吹き付ける風が更なる冷たさを増してきた頃。カプリは森の中を歩いていた。
 寒さを感じない訳ではない。それ以上に彼の心を温かくするものがあったが故、寒さは気にならなかった。
 首には恋人――シェーレからプレゼントされた雪のように白色のマフラーがふわりと巻かれている。そして、共にそれを首に巻く彼女の温もりが、腕の中にあった。何より、そんなカプリを見つめるシェーレの口元に微笑みが浮かんでいる事。それが彼の心を温かくする。
「着いたよ」
 森の中を二人で歩くこと、数刻。目的地に着いたとき、さすがに二人の姿は雪にまみれていた。だが、その苦労も吹き飛ぶ程の景色が、目の前に広がっている。
 誰かがリヴァイアサン大祭を祝したのか、それとも来訪者の目を楽しませる為に用意したのか。木々の枝にはランタンが下げられ、その柔らかな光は彼らを優しく出迎える。ふわりと風に舞う粉雪はその灯りを反射し、夜空に光を踊らせた。
「綺麗……」
 どちらからともなく漏れた呟き。それもまた、夜空と雪と灯りの景色に溶け込んでいき――。

 その景色を見ながら、恋人達は微笑みを交わす。
「キレイな物を見て、綺麗だと言い合えるってとっても幸せだね!」
 カプリは言葉を紡ぎ、彼女の頭に積もった雪をさっと軽く撫でるように払う。
 その一連の動作をシェーレの視線は追っていた。視線は彼の指先から、緋色の瞳へと向けられ。
 視線を交わした後、彼女は小首をかしげる。
「うん、共有できるって素敵だもの」
 そうして二人の目はランタン達が描く景色に向けられた。
 穏やかな時間。何事にも変えられない時間。二人の大切な時間は過ぎて行き。
「なぁに?」
 カプリの視線は景色ではなく、腕の中にいる恋人に向けられていた。
 その目は、周りも綺麗だけどそれ以上に灯りに照らされた彼女の姿の方が綺麗だ、と物語っている。
 判りやすい、とは言わない。その視線に特別な理由はないことも判ってる。だけども。
(「――ちょっとだけの意地悪」)
 シェーレの問いに、返って来たのは慌てた表情でもバツの悪い顔でもなく。
 満面の笑み、だった。
「二人で笑いあえたら何より幸せだね!」
 もしかしたら照れ隠しだったのかもしれない。
 力強い抱擁の、奥に聞こえる鼓動が早鐘を打つように聞こえたのだから。

 冬という季節はまだ終わりを告げていない。
 だが、恋人達の暖かい時間はまだまだ、続くのだった。
イラストレーター名:作