■リヴァイアサン大祭2012『ゆきのした、なつのゆめ』
冬の街に静かに雪が降る。灰色の空。ひらりひらと舞い落ちる白いかけらに彩られた広場の中央には、立派なツリー。
その大きなモミの木を見上げて感嘆を声を漏らす、トウジュとロータス。
「弟、ホンマにこれに飾り付けしてええんか?」
「そうやよ、俺が見つけたとっときの、家族だけのツリーやもん」
期待に目を輝かせて尋ねる兄トウジュ。
悪戯っぽく笑い返す弟も、心底楽しそうだ。
家から持ってきた飾りを、兄弟は本当に楽しそうにつけていく。
少し高い所には、トウジュはサードアームで伸ばした髪を。
ロータスは、自慢の脚力で軽々と跳び上がり。
ロータスの妖精ニンフェアは、2人よりもう一段高い所にモールを運んでご満悦。
小さな妖精の自慢気な仕草に、兄弟は顔を見合わせて笑う。
大好きな仲間とのお祭りの準備はとても楽しく、寒さも、時間も忘れさせてしまう。
「よし、あとは――」
そうして最後に残ったのは、2人の大事なちび弟に似たペンギン雛のオーナメント。
「これは2人で飾り付けようや」
ちび弟と同じくふわほわの毛に覆われた飾りをそっと摘み、落とさないように慎重に……。
「うん、最高や」
満足そうに頷く2人。
枝に取り付けられたちび弟が冬の風に揺れる。
可愛らしい子ペンギンと出会った夏空の街を思い出せば、あの日の出来事が兄弟の胸を暖かくする。
「――あ、雪がちょっと止んできた?」
もしかしたら、ちび弟が温もりを運んできてくれたのかもしれない。
「ほな、そろそろ帰ろうか?」
「うん! なあなあ、帰ったら何食べる?」
弟へ振り返り、手を伸ばすトウジュ。
その差し出された手をぎゅっと握るロータス。
お互いのぬくもりが重なり、真冬の寒さもはねのける程の熱を生む。
前を行くトウジュに手を引かれ、一緒に駆け出すロータスを笑顔にするものは、食べ物への期待だけでなく――。
2人、仲良く手を繋いで帰る後姿を、ちび弟のオーナメントが優しく見守るのだった。