■リヴァイアサン大祭2012『穏やかな夜』
しんしんと降り続く雪。空にはリヴァイアサンが泳ぎ、空気がきんと冷えて人々は身を寄せ合って温もりを求める。
「お疲れ様でした、レフェ。これでゆっくりできますね」
アニスは恋人同士になって初めてのリヴァイアサン大祭の日の大事な外出を終えて、レンフェールと二人で帰宅し着替えたところだ。
中流家庭であるレンフェールの親戚への挨拶回り。それに一日を費やしたのだ。
日は沈み、夜になっても降りやまない雪が窓の外に舞い、それを見ながら着替えを済ませ、二人は一日の疲れを癒すようにソファに並んで腰を降ろした。そして大盤の膝掛けを広げて二人で一緒に入る。
「お疲れ様です、アニス。やはりこうして一緒にゆっくりできる時間がある方が良いですね」
暖炉には暖かな火が燃え、揺らめく炎が気持ちまでほかほかにしてくれそうだ。
長い銀髪をゆるく三つ編みにし、料理好きなレンフェールは恋人と自分のために率先してティータイムの準備をする。
レンフェールが用意してくれた紅茶をゆっくり楽しみながら、アニスはふと自分の服装を見下ろした。
普段は実用性重視でシンプルなものを好むのだが、今日はフードつきのふわふわセーターを着ていた。フードには猫耳までついていて、とても可愛らしい。
「……正直、恥ずかしいのですが」
着慣れない服装なので自分に似合っているかどうかわからない。
それを言ったら先ほどまで特別な日だということで着ていたドレスもだが、レンフェールが選んでくれたから今の服の方がよほど緊張してしまう。
それでも、やはり恋人であるレンフェールが薦めてくれた服なら、着たところを見せてあげたいと思い、アニスは今日が終わるまではこの服でいようと決めた。
「せっかくのお祭りですし、レフェの為なら、と……」
「よく似合っていますよ」
青い瞳が柔らかく微笑む。
その優しい笑みを見ればアニスもほっと嬉しくなりオレンジの瞳を細めた。
膝掛けを掛けた膝の上でアニスのバルカンであるかるんとばるんが気持ちよさそうに丸くなる。それを撫でながらアニスはそっとレンフェールに身体を預けて寄りかかった。
「これから先も、よろしくお願いしますね」
はにかむように微笑めば、レンフェールからも「こちらこそ」と返ってくる。
肩を抱いたレンフェールの手。
温かく幸せなひと時がそこにあった。