■リヴァイアサン大祭2012『霖冬』
「サインー、ちょっと一緒に来て欲しいんよー♪」有無を言わせない、といった様子のレイラに手を握られ、そのままサインは外へと連れられた。
普段引きこもりの俺だというのにこの寒い日に限って何を外に……と思えば、その答えはその白銀の眩しさに、すぐそれと判る。
――眼前に広がる、一面の銀世界。
「朝起きて外見たら一面の雪景色やってん、これは遊ばん訳にはいかんやろ!」
そう、楽しげにレイラが笑うから。
流石のサインもこれを無下にする訳にいかず、それに折角教えて貰ったのだから無駄にするのも勿体ないと。
穏やかな微苦笑を浮かべて、頷いた。
「一緒に何か作ろう、レイラ」
「ん! やっぱり雪っていえば雪だるまかなっ?」
外で身体を動かすのが好きなレイラは心から楽しそうで、そんな彼女を見ていると、偶になら、身体を使ってみるのも悪くはない。
それに、今のサインの頭には、帽子が乗っている。それは、サインにとっては特別なもの。
「ふふ、早速その帽子被ってくれて嬉し」
「今日はレイラがくれた、新しい帽子もあるんだから……子どもに戻ったようなはしゃいだ気持ちでいても、構わないだろう」
「遊ぶんに歳なんて気にしたらいかんのよ」
そんな訳だから。
えいっと、レイラの掛け声と共にサインに飛ぶ雪玉。
それを受けたサインは一瞬、驚きにその夜の青藍を宿した双眸を丸めるも、すぐにふわりと微笑んで。
(「どうせ部屋に入ったら温まるんだから、今くらい寒くても構いやしない……」)
だから今日は特別。君の一日のスケジュールに合わせよう。
いつもは、レイラがサインに合わせてくれているから。その優しさに甘えっぱなしでは、勿体ないと思うから。
そうこうしている内に、空には茜色が掛かり、雪だるまもそろそろ完成という頃合い。
小さな雪玉をぺちぺちする子リスのジズを、レイラがその手に乗せて軽やかに笑う。
「思いっきり遊んだ後は身体も冷えるやろし、今度は部屋の中でまったりしよなぁ」
そう言って、ジズを首元のマフラーに潜り込ませるレイラの姿に、その言葉に、サインは心穏やかな気持ちになる。
「いつもありがとう。レイラ……」
「うん?」
レイラは軽く首を傾げるが、サインは今、感謝の気持ちを伝えておきたかったのだ。
(「俺はきっと、お前が思っている以上に、君に感謝しているよ……」)
そんなサインの胸中を知ってか知らずか、レイラは気持ちのいい笑顔を返すのだった。