■リヴァイアサン大祭2012『望むならあなたに聖夜の星を』
星霊リヴァイアサンが天を舞う、一年に一度のお祭りの日。通りが一面の白で埋め尽くすのを眺めながら、テーブルを囲む二人組がいた。
「ねえ、フィオ。プレゼントは何がいい?」
グラスを片手に、頬を少しだけ赤く染めたレイラが尋ねる。
「レイラさんがくれる、なら……何でも嬉しい、ですよ?」
と、ソフトドリンクを揺らしながら返すフィオ。そんな答えも嬉しいと言えば嬉しいのだけれど……と、内心レイラは困惑気味。
結局、いい案も思い浮かばぬまま、二人は酒場を後にしようとする。
先に店を出たフィオが、天を仰いでいるのが目に入った。
「星が……綺麗、です」
雪の舞う中に、唯一人在るフィオ。白い髪がふわりふわりと風に遊ぶ。
そんな様子を見て、フィオの方が綺麗だけど――と、歯の浮く言葉を飲み込みながらも、妙案得たりと頬を緩ませたレイラは。
「じゃあ、星を差し上げましょうか♪」
そう言うやいなや、フィオをお姫様だっこし、軽々と酒場の屋根へと登ってゆく。
「あなたが望むならあの星でもリヴァイアサンでも差し上げますわ♪」
星灯りと、街の明かりを背に受けて、ゆっくりとフィオを降ろしながら微笑む。
大祭の雰囲気も重なって、その姿は幻想的にも見える。
「もう、レイラさんったら……」
少し酔っているのだろう、普段よりも少し上機嫌で話す様子に、フィオは少しだけ苦笑いしながらも。
二人寄り添って、同じ空を見上げる。
星の一つ一つを指さしながら、色んな名前を出していくレイラをふと見ると、愛おしく感じてついつい抱きしめる。突然の感触に、思わず驚きながらも尋ねる。
「……冷えます?」
「いえ、温かい、ですよ……」
そう言って優しく笑うフィオが、やっぱりレイラにとっても愛おしくて。
お互いの顔がゆっくりと近づくと、そのまま気持ちを確かめあうようにその唇を合わせた。
今宵、二人の幸せを知っているのは、空を泳ぐリヴァイアサンと、その頭上に輝く物言わぬ星々だけ。
静かな夜は、思い出と雪だけが、ゆっくりと積もっていく――。