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2人でリヴァイアサン大祭

花歌の守り手・クロエ
白昼の梔子・ハインツ

■リヴァイアサン大祭2012『雪降る下で、約束のお姫様抱っこ』

(「今日こそ、約束を果たさなくては……」)
 ハインツはお湯の中で、ぐっと拳を握る。
 約束をしたはいいものの、左肩にある傷のせいで思うようにいかなかった。それで尻込みすること数度。でも、水の浮力があればきっと、そう確信するハインツ。
(「……何だか変に意識しちゃって」)
 二人きりでの温泉は初めてで、少しそわそわと落ち着かないクロエ。
 ハインツの内心など知らず、いや、知る余裕のないクロエは、なんとなしに空を見上げた。
「綺麗……」
 空には星霊リヴァイアサンが舞い、雪が静かに降り注いでいる。クロエは、その美しさに感嘆の声を漏らすと、自然と肩の力が抜けていった。
「あの……今日こそ、約束を……」
 空を眺めてのんびりし出したクロエに、ハインツが少し恥ずかしそうに口を開いた。
 その言葉に少し驚いたクロエがハインツを見る。約束の事を思い出すと少し恥ずかしいのか、クロエの頬がうっすら赤くなった。そして、ちらっとハインツの肩の傷が目に入ってクロエを複雑な気持ちにさせた。
「さぁ、お姫様どうぞ」
 普段は言わないような台詞を口にしたハインツは、微笑んで両手を広げる。
(「でも、やっぱり折角の機会だし……」)
「落としたりしたら、承知しないんだから」
 クロエは照れを隠すように冗談交じりに言うと、広げられたハインツの両手の上に、体を横たえさせた。
 ハインツは、思ってたよりずっと軽かったクロエの体をしっかりと支える。それに合わせて、クロエはハインツの首に手を回してしがみついた。
(「傷、大丈夫そうだね……」)
 クロエは、安心したと同時に、恥ずかしくもなって顔を伏せてしまう。
「せっかくだから、顔を見せてくれませんか?」
 優しいハインツの声がクロエの頭上から降ってくると、クロエはうっすら赤くなった顔を上げた。
「……」
「……」
 無言で見つめ合う2人。どちらからともなく目を閉じた。
 優しく重なり合う唇。
 触れ合う箇所から感じ合うぬくもりは、温泉よりも、なお温かく――。
イラストレーター名:ねこくらげ