■リヴァイアサン大祭2012『Je te veux』
「ふふ、楽しかったわね……普段はあまり賑やかなのは好きじゃないのだけど」リヴァイアサン大祭の夜、ユーディトが自室のソファに座ってくつろぐ。
「あら、そうなんですか?」
隣に座るファルファーラが穏やかに微笑んだ。
「ええ、一人で過ごすのには、静かな方が落ち着くわ……でも……」
温かな湯気を躍らせているカップを取り、一口啜る。その温かさに一息ついて、
「……貴女と一緒だからね、きっと」
賑やかなのも楽しいと感じたのは、続く言葉は再び口を付けたカップの中に溶けた。
「もう、からかわないでくださいよぅ」
その言葉に、薄く頬を染めたファルファーラが拗ねたように、カップを両手で持つ。
ユーディトは、そんなファルファーラを横目で見て、くすり、と小さく笑った。
「でも、さすがに少し疲れたわね……少し休もうかしら……」
ユーディトはカップをテーブルに戻し、んー、と伸びをする。
「じゃあ、膝枕してあげましょうか?」
横でカップを両手で持っていたファルファーラが、伸びをしていたユーディトに微笑みかけた。
「え……?」
伸びをしていたユーディトは、ファルファーラの意外な申し出に、伸ばしていた腕をそのまま宙で止める。
「疲れたのでしょう?」
ファルファーラは、動きを止めたユーディトに、更に後押しするように微笑んだ。
ユーディトは少しの逡巡の後、伸ばしたままだった腕を下ろす。
「じゃあ、お願いしようかしら」
頷いたユーディトの顔は、珍しく少しだけ照れて頬に赤みがさしていた。
はい、と微笑むファルファーラは、カップを置いて一度座り直し、着物の裾を正す。ぽんぽん、と叩いてユーディトを招いた。
その柔らかい膝枕に、静かに頭を預けて仰向けになるユーディト。ゆっくり目を閉じると、控えめなファルファーラの香りがユーディトを包む。
「来年もこうして一緒に過ごせるかしら……?」
「ええ、きっと」
幸せそうに呟くユーディトの髪を優しく撫でながら、ファルファーラが頷いた。