■リヴァイアサン大祭2012『holly night』
様々な奇跡が起こるリヴァイアサン大祭当日。エルフヘイムでは雪が降り続き、雪で造られた見事なお城が姿を現した。「凄いな……家具も全部雪だ……」
ニノルダは、上品なベッドやソファーの家具まで雪で出来ている事に感嘆の白い息を吐く。
「こんな景色……初めて見るわ」
リディアは楽しそうに瞳を輝かせて、部屋の中を見回していた。
「リディア、寒いだろ。抱っこしてあげる」
ベッドに毛布を敷いて腰掛けたニノルダが、膝をぽんぽんと叩いて招く。いくら毛布を敷いたからといって、ひやりとした雪の固さの上では冷えてしまうから、膝の上においで、と。
リディアは、その招待に頬を染めて頷いた。
「じゃあ、私もニノルダをあっためるね……」
その言葉にニノルダが微笑むと、リディアの体を膝上に乗せて抱きしめる。
「あったかい」
ニノルダが幸せそうに呟いた。全てが雪で作られている室内相当冷え込む。だから、普段より鮮明に体温が感じられたのだ。
「うん……」
リディアもぎゅっとニノルダに抱きつくと、体は当然、心にも、その温もりが広がる。
(「ちょっとドキドキするけど……凄く安心する……」)
リディアは、安心したような幸福感に包まれた表情を浮かべた。
お互いのぬくもりを伝え合いながら、ふと絡まる視線。どちらからともなく顔を近づけて唇が重なる。
「……」
「……」
静かに唇が離れると、見つめ合い、頬を染めながら微笑み合った。
ニノルダが気恥ずかしさを隠すようにリディアを強く抱きしめる。リディアからは見えないその顔は、随分と赤くなっていた。
(「夢の中でもニノルダと過ごせるといいな」)
リディアは、愛しい人の温もりに幸せを感じ、夢の世界へ誘われていく。
「寝ちゃった?」
ニノルダが、聞こえた寝息に腕を緩めると、安心しきったリディアの寝顔。
その寝顔に溜息一つ。
「朝まで、遠いな……」
部屋の冷気が、浮わついた思考を冷ましてくれたらいい、と。
年に1度だけ姿を現す雪の城で過ごす特別な夜は、ゆっくりと更けていく――。