■リヴァイアサン大祭2012『Milagro encontre de nuevo』
エルフヘイム。リヴァイアサン大祭の喧騒を逃れ、リュアンはルキラとともに、しばしの静寂を感じ取っていた。
この丘。リヴァイアサンの丘にたどり着いた二人は、頂上近くに上り、その斜面にて寄り添い腰を下ろす。
「リュアンさん、見て! 空に星が、あんなに!」
見上げたルキラの言葉に、リュアンは相槌を打った。
「ああ、大したもんだ」
実際、大したものだ。ここで夜空を見上げると……まるで自分が、この夜空そのものを、『見下ろしている』かのような錯覚を起こす。
「……きれい、だよね」
「ああ。きれいだ」
ルキラの言葉に相槌を打ち、そして実感する。世界の広さを。広大にして壮大な世界に、自分たちは生きている事を。
リュアンはいつしか、寝そべって星空を見つめていた。ルキラもまた、彼に合わせて寝そべっている。
二人の視界を占めるのは、種々雑多な宝石のごとき輝き。それらが夜空を飾り、美しい輝きで覆っている様子。
その夜空……否、星々の海を優雅に漂い泳ぐは、星雲リヴァイアサン。
天空を駆ける星雲のきらめきは、二人から奪っていた。言葉を。
感嘆の言葉すら、その輝きの前には消える。雑念すら、目前の美と神秘の前には消えてしまう。
無言と沈黙が続き、ようやくリュアンは気づいた。
自分が……ルキラの手を握っている事を。
横を向くと、ルキラもまた同じタイミングで、こちらへと顔を向ける。
お互いに、知らぬ間に手を握ってしまっていた。それをお互い、ほとんど同時にその事に気づいた。
「……ふっ」
「……ふふっ」
リュアンが、微笑み。ルキラも同じく、微笑みを浮かべる。
微笑みながら見つめ合う二人は、いつしか握った手を、より強く、そしてより優しく、握り合わせていた。
「……」
やがて、ルキラが目を閉じた。
不思議だ。言葉を交わしていないのに、言葉を発していないのに。
ルキラの気持ちが、なんとなくわかる。何を望んでいるのか、どことなくわかる。
リュアンは静かに目を閉じ、ルキラへと顔を近づけていった。
彼女の唇の感触が、リュアンの唇から伝わってくる。
「……」
「……」
そして、唇を放し。
二人は再び、互いを見つめていた。
リュアンは見た。ルキラが恥ずかしそうな表情を浮かべ、うっすらと頬を染めているのを。
「……ねえ、リュアンさん」
「ん?」
しばしの沈黙の後。ルキラが声をかけてきた。
「約束、しない? 来年もまた……ここで一緒に、リヴァイアサンを見ようって」
「ああ、そうだな。俺もまた、一緒に見たいよ。ここで、ルキラと一緒に」
言葉を発し、リュアンはぎゅっとルキラの手を握る。
「また、来ようぜ。そして、また、一緒に……な?」
「……うん、そう……だね……」
恥ずかしそうな口調で、ルキラも微笑み、リュアンの手を握り返してくる。
星々のきらめきの中。リヴァイアサンは二人を祝福するかのように、いつまでも輝き続けていた。