■リヴァイアサン大祭2012『iced-lovers-load』
ちらちらと空を舞い降りる雪が、テラスに運んだテーブルと椅子に舞い降りてくる。風はほとんど無いが、それでも差し込んでくる寒さに、椅子に座って待っているエクサは首に巻いているマフラーを整えた。「お待たせしました、温かいお茶ですよ」
ハーブの香りが漂うティーポットを持って、ヴィーネもテラスへと姿を現した。
手早くティーカップを用意してポットからハーブティを注ぐと、真っ白な湯気が二人の視界をかすませながら空へとのぼっていった。
「冷めないうちに召し上がれ」
エクサと向かい合うようにヴィーネも腰を下ろし、美味しそうにお茶を口にする。
ヴィーネが突然言い出した外でのお茶会に戸惑いながらも、どこか楽しそうなヴィーネの姿にエクサの口元もゆるんできて、この一風変わったティータイムを楽しむことにした。
「ところでヴィーネ殿……どうしてこんな雪の日に外でお茶会をするのでござるか?」
体も温まり、会話がとぎれたところで思い切って聞いてみた。
ヴィーネは小首を傾げて笑みを浮かべ、雪の舞い降りてくる空を見上げた。
「先日のラヴァーズロード、綺麗でしたよね」
彼女の視線を追うように空を見上げたエクサは、二人で眺めた神秘的で壮大な風景を思い出す。
水面から浮き上がり、どこまでも続くような透明な道、日差しを浴びてきらめく氷の幻想は、想い合う二人を結びつけ、遙か遠くまで導いてくれるかような気持ちにさせてくれた。
「あのとき、雪道で転びそうになったら私の手をずっと握ってくれてましたよね」
エクサが視線を戻すと、ヴィーナが柔らかい眼差しで自分を見つめていた。
「エクサさんの手のぬくもりがずっと私に伝わってきて、すごく嬉しかったんです。そしてあのラヴァーズロードを見て、このままどこまでも二人で歩いていけるといいなって……そんな気持ちになったんです」
ヴィーナはそっと右手を差し出す。考えるまでもなく、エクサは自然とその手をとった。
彼女の手の平から伝わるぬくもりがエクサの心に染み込んでゆく。同じように自分の想いもヴィーナに伝わっていくのが感じられた。
「ですから、こうした雪の降る場所で小さなぬくもりを感じてみるのもいいかなって思ったんです」
そう言うと、ヴィーナはとびきりの笑顔をエクサに見せる。
エクサは沸き上がる愛おしさと幸せな気持ちを感じながら、『この想いもヴィーナに伝わるといい』と彼女の手を強く握った。
ヴィーナは何も言わずに頷くと立ち上がった。
「さあ、そろそろ家に戻りましょう……お茶を入れ直しますね」
ティーカップを片付けようとするヴィーナを遮って、エクスが変わりに食器をトレイにまとめる。そして片手で持ち、空いた方の手でヴィーナの手を握った。
ヴィーナは少し照れたようにうつむいたが、すぐに顔を上げて、互いのぬくもりを感じながら暖かい部屋へと戻っていった。
「……また来年も見に行きましょうね」