■リヴァイアサン大祭2012『寒いから暖めあおうぜ!』
「リヴァイアサン大祭の夜に雪っていいよな」ロシェを膝の上に乗せ、一緒に窓の外を見ていたアキが、ロシェの細い首筋を両腕で巻きつくように抱きしめながら、吐息のような声でささやいた。
「ん。そうだね……」
アキに触れていると、体の中からポカポカして、何もかもが満たされた気分になる。ロシェは首に巻かれたアキの腕にそっと手をかけ、
「あったかい……」
と呟く。それは心の中で膨らんだ幸せが、心の中には収まりきれず溢れ出したような、自然な吐露だった。
「ロシェ」
そう呼ばれて、アキの大きな左腕を背もたれにしながら振り返り、彼を見た瞬間、二人の視線は熱く絡まり、ロシェの体の中で、これまでに感じたことのない熱い何かが、苦しい程に一瞬にして広がっていった。
でもそれは嫌な気分にさせられる苦しさではなかった。言葉ではうまく伝えることの出来ない感情。
考える暇もなく、少し思いつめたような表情のアキの顔が近付いてきて、その唇が小さなロシェの唇に優しく重なる。
「……っ」
触れ合った体からアキの鼓動が、温もりが、吐息が感じられ、そのすべてがロシェを包み込んで行き、苦しみはいつの間にか安らぎへと変わってゆく。
1秒……。
2秒……。
その一瞬が瞬く間に過ぎてゆくようにも、永遠の様にも感じられる。
頬が上気してきたころ、どちらからともなく、ごく自然に唇と唇が離れたけれど、二人の視線は絡み合ったままで、アキの右手の優しい親指が、その唇をそっとなぞらせる。
「んぅ……もっと……」
本当なら心の奥にしまっておくべき言葉が、心とは裏腹にロシェの唇からこぼれ落ちた。
気が付いたら再び唇が重なっていた。
それだけじゃなく、アキの唇は耳や首筋にも次々と、優しく触れてゆく。
「ん……はぁ……」
自分でも驚くような声が、ロシェの口から抑えきれずに飛び出して行き、日頃我慢してきた何かが堰を切ったかのようなアキは、
「ロシェ好きだ……」
と、何度も何度も繰り返し呟き、
「なぁ……この先もいいよな?」
と、首筋にキスをした後、問いかけた。
頭の中が思考とは違うもので満たされ、
「うーん……もう……眠い……」
夢見心地なロシェは、そう答えながら、アキの厚い胸板に頭をつけた。
ロシェの言葉を聞いたアキは、いつものアキに戻り、それでも少し残念そうな表情でロシェをそっと腕の中に抱え、暖め合いながら夜をすごすことにした……。