■リヴァイアサン大祭2012『二人を包む、白い世界』
恋人になってから、初めて過ごすリヴァイアサン大祭。二人はやや緊張気味な様子で、雪の舞う広場へと訪れた。
「コート、とても似合ってるよ」
開口一番に、カミュはそう口にした。
その言葉に、マリアベルの頬がほんのりと赤くなる。
「カミュも、そのコートとても似合ってますの」
マリアベルから返された言葉に、カミュも同じように頬を染める。
マリアベルの着ている、ケープの付いた薄桃色のコート。
カミュの着ている、ファーの付いたベージュ色のダッフルコート。
どちらも、それぞれがそれぞれへ、リヴァイアサン大祭の記念にプレゼントしあった物だった。
相手の事を考えて選ばれた品は、どちらにもとてもよく似合っていた。
照れつつ、カミュが手を差し伸べると、マリアベルがその手を取り、二人は広場を歩き始めた。
『一緒に雪を見る』という約束。
それを叶える為に、雪の降り積もった広場へとやってきた。
辺りは夕日の色に染まってはいたけれど、そこは確かに雪の満ちる銀世界。
辺り一面に敷かれた雪の絨毯も、宙を舞う小さな雪も、日の光を受けてきらきらと輝き、雪の白と、夕日の朱で彩られた景色は、神秘的な美しさを作り出していた。
そんな中を、二人は並んで歩いてゆく。
同じ方向に進み、同じものを見て、同じもの聞いて、同じもの感じている。
雪の冷たさ、手の温もり。
雪の降る音、互いの声。
美しい雪景色、楽しそうな横顔。
それは、大切で愛しい、二人だけの時間だった。
夕日に照らされて、長く長く伸びた影は二人分。
サクッ、サクッ、と、雪を踏みしめる音も二人分。
かすかに聞こえる、呼吸の音も二人分。
この瞬間だけ、世界は二人だけのものだった。
ふと、マリアベルが空を指差す。
「カミュ、あそこを見て」
その声に、カミュは指差したほうに視線を向ける。
そこには、二人と同じように朱に染まった空と、その中を翔けるリヴァイアサンの姿があった。それはとても幻想的な光景で、マリアベルもカミュも思わず見惚れてしまうほどだった。
マリアベルが楽しそうに笑みを浮かべる。そんな楽しそうな様子に、カミュも笑みをこぼすのだった。
握った左手が暖かくて、カミュは幸せな気持ちだった。
来年も、再来年も、その先も、ずっと一緒に過ごせたらいいな。そう、心の底から願った。
握る手に、少し力が込もる。
握った右手が暖かくて、マリアベルは幸せな気持ちだった。
来年もこうして、一緒に過ごしたいな。そう、心の底から願った。
込められた手に答えるように、その手を握り返した。