■リヴァイアサン大祭2012『二度目の、』
暖炉の暖かな灯りが室内を満たす。そんな中で、ルゥとマンジがリヴァイアサン大祭に向けて大きなツリーを飾り付けていた。その足元では、仔狐と豆狸が楽しそうに駆け回っている。
ルゥがうきうきとしながら、てっぺんの星飾りを付ければ、マンジも手に持った『家内安全』と書かれた真っ赤な短冊をツリーへと付けようとしていた。
ツリーの横に添えられたそれは、誰もが注目してしまうような独特の存在感を放っている。
……ある意味、ツリー自体よりも目立っていた。
「今夜も雪、降るかねぇ? 楽しい祭になりゃ良ぇなぁ」
とは、マンジの言葉。
「きっと、今回も楽しいお祭りになるよ」
楽しい未来を想像してか、ルゥは笑顔でそう答えた。
笑みにつられて、口元に付けた白い付け髭が揺れる。こういう仮装も、お祭りならではの楽しみだ。
そんなルゥの顔を、いつの間に潜り込んだのか、ツリーの靴下飾りの中から、仔狐のごんちゃんがつぶらな瞳で眺めていた。
ルゥの視線がこちらに向けられたことに気づくと、ふりふりと尻尾を振りながら、小さな前足をルゥへと伸ばす。……とても抱っこして欲しそうだ。
そんなごんちゃんに、
「似合うかな?」
と、尋ねながら、ルゥはごんちゃんの身体を優しく抱き上げた。
尋ねられたごんちゃんは、ルゥの腕の中で小さく首を傾げる。口元の見覚えの無いパーツを気にはしているようだが、それが何かまで分からなかったようだ。
そんな仲睦まじい様子を、楽しそうにマンジが眺めていると、これまたいつのまに潜り込んだのか、ツリーの中から豆狸のぼんちゃんが顔を出したのを目に留めた。
ぼんちゃんは、器用に身をよじると飾られたオーナメントなどを足場に、ツリーを軽快に上り始める。その先には、人型のクッキー……ジンジャーマンクッキーの飾りが揺れていた。
ぼんちゃんの瞳は、心なしかキラキラと輝いていた。
「あぁ、ぼん。それは食いもんとちゃうよ、食うたあかんて」
意図に気づいたマンジが、慌ててぼんちゃんを抱き上げた。
抱えられたぼんちゃんは、手の届かない所に行ってしまったクッキー飾りを名残惜しそうに見ていた。その瞳は心なしかしょんぼりとした色を浮かべていた。
そんなぼんちゃんの食いしん坊っぷりに、思わず笑みをこぼしてしまう2人。
「この後たらふく食うたらええよ」
「御馳走をいっぱい用意してあるからね」
と、それぞれぼんちゃんを励まし、再び飾り付けに戻るのだった。
ちなみに、マンジの短冊はツリーに飾り付けられた。突っ込み待ちではあったが、誰も入れてくれない様子だったので、しばらく迷った末に大人しく飾っておくことにしたようだ。
それを見ていたルゥが、ツッコミを入れるべきか否かをこっそりとごんちゃんに尋ねたりしていた。
その後、短冊がどうなったかは……また別のお話。