■リヴァイアサン大祭2012『恋するリップにルージュの魔法』
メリー・リヴァイアサン♪交わす挨拶と共にレイラが贈ったのは、きっと彼女によく似合うと思った、明るいながらも上品な色合いの口紅。
喜んでくれた彼女──ベルはけれど、少し申し訳なさそうな声色で、上目遣いに言った。
「でもわたし、あまり口紅って使ったことがなくて……」
「まあ。ならば使い方をご教授いたしますわ♪」
「あ、あのー……」
「動いてはいけませんわ」
(「何故?」)
くすと笑う至近距離のレイラに、すっかりベルは弱り顔。
動いてはいけない理由が、判らないのではない。口紅の使い方を教えてくれているのだ、それもありがたい。
だけど、それが何故、レイラがベルに実演するという形で、行われているのだろう?
ベルの声なき疑問に、レイラはふんわり笑み、彼女の唇をすぅっとなぞった。
「役得ですわ♪」
──そんなばかな。
ん、と鏡を見ながら、最終確認。
思った通り、彼女の肌に、唇に、選んだ色はよく似合う。
「いかがです?」
「う、うん。すごく、綺麗。ありがとう──……」
ほんの少し照れを含みながらも素直に礼を告げたベルが、「そうだ」はたと気付く。
「わたしもなに、お返しをしないと」
彼女らしい申し出。レイラは笑う。
「特に気にしなくてもよろしいんですけど」
だって、彼女に似合うと、彼女につけて欲しいと、彼女に贈りたいと、そう思ったのはレイラの気持ちで、だからそれを受けてくれただけでも、嬉しい。
けれどベルは、「そういうわけには」と両手を振る。
それもそうかと、レイラも肯き、思いついた『お返し』に、ふふと微笑を浮かべた。
「……じゃあ、少しお返し頂けます?」
返事を待たず、かすめるように奪い重ねた、唇。
きょとんと赤い瞳をまん丸にしたベルは、事態を一拍遅れて理解して「はわわー……っ!」目を回しそうな様子で頬を染めた。
離れたレイラの唇に、ベルの口紅がうっすらと移ったのを指差し、レイラが問う。
「これでよろしいかしら?」
「……っ!」
ところが、可愛らしい彼女は、猫のような目をす、と細めて、思いもよらない、反撃猫ぱんち。
「……まだ、残ってるよ?」
「まあ」
望まれるなら、応えないわけにはいかない。
体重預けて、さぁもう一度。
あなたのあかを、奪いましょう。