■リヴァイアサン大祭2012『Honey Time』
優しく雪が舞い散る中、甘い蜜の流れる小川の畔に、1匹の兎が元気に飛び跳ね回っていた。「ノイズ、早く、早くっ」
白い兎耳のフードから漏れる薄桃色の髪をふわふわ揺らしたセシルが笑顔ではしゃぐ。
「そんなに飛び回ってると転ぶぞ」
ノイズがのんびりと声をかけた。
「大丈夫ですよ〜……きゃっ」
何かに躓いてバランスを崩したセシルの腕を、ノイズが「だから言っただろ」と言いながら、引いて支える。
「あ、有難う御座います……お弁当にしましょうか」
セシルは少し照れたように頬を染めて、話題を切り替えるように、にこっと笑った。
「お弁当は……じゃじゃーん、パンケーキです。クリームコロッケやハンバーグやチーズ等、色々な具を用意してきましたから、お好きなものを挟んでどうぞ♪」
自信満々に笑顔を広げながら、バスケットの蓋をカパっと開くセシル。
(「前に旅団で来た時には確か、ハンバーグを挟んだな……」)
パンケーキには意外なトッピングであるが、それが美味しかったとノイズは思い出す。何となく以前と同じようにハンバーグをパンケーキで挟んで、ケチャップをかけた。
セシルは、幸せそうに瞳を輝かせて顔で小川の蜜をかけている。
2人は他愛のない話をしながら、のんびりと小川の景色を眺めて、パンケーキを口に運んだ。
「それにしても、甘党には感動の光景ですね……もう、そのまま食べちゃいます」
セシルが蜜を掬っていたスプーンをおくと、指で直接掬って、ぱくっと指を口に入れて舐める。
「美味しい♪ ノイズも一口いかがですか?」
幸せそうな笑顔を広げるセシルは、指で蜜を掬って舐めながらノイズに勧めた。
「折角だからオレも一口頂いておこう」
ノイズが腰を上げると、セシルの手を取る。セシルが「え?」と驚いている間に、指先の蜜がノイズに舐め取られた。
「……っ」
(「わ、私ごと食べられちゃいました……っ」)
セシルは真っ赤になって、言葉が出てこない。
「ん。美味い」
ノイズが満足そうに笑った。
「寒いな……」
そのままセシルの手を引いて抱きしめる。
「弁当美味かった。有難う」
腕の中のセシルに優しく感謝を伝えた。心の中では、今年もこの日を共に過ごしてくれるコトも合わせて。
セシルは、閉じ込められた腕の中で、たくさんの思い出を振り返り、新たな年へと想いを馳せる。
願うなら、この先もずっとずっと甘い時間を――。