■リヴァイアサン大祭2012『お腹も心もぽかぽかな思い出』
「!」クラッカーの爆発音とともに、小さな仲間達がびくっとするのを、カラスは見つめていた。
内心彼も、ちょっと驚いていたのだけど。
びっくりしたのは黒い相棒……黒ミニウサギの『もいもい』。もいもいの隣には、同じく白と黄色の動物が二匹……いや、二羽。ワタヒナドリ、白の『わたあめ』に、黄色の『ぷりん』。
「あっはっは。おどろかせちゃったみたいだねー」
カラスと向き合い座るマアムが、いつもののんびり口調で言った。
本日リヴァイアサン大祭。なので二人は、パーティーを開く事に。テーブルを挟んで座り、その卓上には様々なごちそうが。
「じゃ、乾杯」
「……乾杯」
飾り付けられた室内。外の寒風も、室内のぽかぽか暖房の前には関係なし。二人はシャンパンのグラスで乾杯し、三羽は皿に盛られたそれぞれの、鳥用・兎用のごちそうへと飛びついた。
「美味いものいっぱいで嬉しいな……。リヴァイアサン万歳だ」
噛み締めるように呟いたカラスだが、実際彼は今、ローストビーフとサラダとを口にして、それらをじっくり噛み締めていた。
「うん。いっぱい美味しそうな食べ物があるねぇ、リヴァイアサン素敵!」
マアムもまた、うなずいた。目前に並ぶ料理は、彼とともに買ってきて用意したもの。自分が作っても良かったが、なぜかマアムに止められてしまった。
ともかく、グリーンサラダにローストビーフ、フライドポテトにカナッペなど、料理がテーブル上に並ぶ様は、見ているだけでわくわくがいっぱい。
そんなごちそうたちの王のように置かれているのが、一羽丸ごとのローストチキン。
その隣には女王のように、苺ショートケーキが丸ごと一ホール。大がつくほど甘味が好物なカラスとしては、すぐにでもかぶりつきたいところであるが、それは後のお楽しみ。
「もいもいも、いっぱい食えよ。ほら、あーん」
卓上のもいもいの皿には大盛り野菜。カラスが差し出したにんじんに、もいもいは嬉しそうにかじりついた。
「わたあめとぷりんも、たくさん食べておおきくなるんだよぉ」
同じくワタヒナドリ二羽へと、マアムは餌をやっている。餌をくちばしでつつく様子を見て、カラスは思わず手を伸ばした。
「お前らもご機嫌だなあ。美味いか?」
言いつつ、うりうりと指先で頭を撫でてやる。
すり寄ってきたもいもいにも、同じくうりうりっと撫でてやると、目を細めて嬉しそう。
他愛のない時間が過ぎていくが、それはとてもあったかい一時。並ぶごちそうで空腹が満たされるのみならず、心も満たされていくかのような、そんな感覚があった。
「マアム、メリーリヴァイアサン」
改めて、そう口にする。なんだか、今の気持ちを口にしたくなって。
「また来年も、よろしくな」
兄の言葉を受け、弟も嬉しそうに。
「うん、お兄ちゃん。メリーリヴァイアサン! 来年も、再来年も、ずっとずっとよろしくねぇ」