■リヴァイアサン大祭2012『歌紡ぎから守り手へ、木漏れ日の歌を』
星霊リヴァイアサンが空を舞う、その日。樹木に光が灯って周囲を優しく照らしていく様子は、まるで木漏れ日のよう。
この光の下で贈り物を渡すと、それには妖精の祝福が宿るのだという。
「私からのプレゼントは、これ」
クロエが微笑みながら差し出したのは、虹色の蝶を象った髪飾りと、彼女の気持ちが籠められたメッセージカード。
「これ……ありがとうございます……!」
まだ持っていないその色も、髪飾りも、ククリのことをちゃんと覚えていてくれた証のようで。
カードに記された言葉は、心にあたたかさをくれるよう。
藍色の髪に飾っていくうちに、ククリにはいつもよりたくさんの笑顔が浮かんでいた。
「うん、思った通りよく似合ってる」
鮮やかな彩の蝶の翅が、おっとりと大人しい彼女に華やかさを宿したよう。
笑みが絶えない彼女の様子を見ていると、クロエも嬉しくなってくる。
「クーからは、これです」
「わわ、可愛い!」
そっと渡されたのは、桜色のうさみみ付きパーカー。
以前、一緒に行った街で買ったお揃いのうさぬいとそっくりのものだ。
早速着てみると、うさみみの下で咲いているような、けれど少しだけ不恰好なガーデニアがふわりと揺れる。
「わあ、ねぇ様、とっても可愛らしいです!」
「えへへー、ありがと!」
少し照れながらも、クロエにも笑顔が満ちていく。
ふわふわでもこもこの感触は、夢のような心地。
ぬいぐるみになってしまったみたい、と喜ぶククリを見て、思い出が蘇る。
一緒に買ったときの願いが、確かに今へと続いている。
あのときの花と、このパーカーに添えられている花の言葉を思うと、幸せがいくつにも重なっていくよう。
心が交わされるようなお互いの贈り物が嬉しくて、笑顔で一緒に過ごす時間があまりにも素敵で。
「お礼に、ねぇ様へ歌わせてくださいませんか?」
そう申し出たククリに、クロエは微笑んで頷いてみせる。
「うん、聞かせて」
彼女の歌をちゃんと聞いたことがなかったから、それは願ってもないことだった。
同じように微笑みを零したククリは、小さく呼吸を整えると、ゆったりとした音調で歌い始める。
――紡がれていくのは、幸せを願う歌詞。
歌いながら想うのは、クロエが贈ってくれたカードの言葉。
願いが籠められたカードは、きっと歌声に自分の想いを乗せてくれるはず。
優しい歌声が、想いを伝えるように流れていく。
柔らかな音色が齎す心地好さと、籠められたものがより深く届くような気がして、クロエはゆるりと目を閉じて耳を傾ける。
――大好き。
包むようなその想いが、そっと入っていくのを感じた。