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2人でリヴァイアサン大祭

お狐様に守護されし巫女・クシロ
ぷっちん・ノドカ

■リヴァイアサン大祭2012『ぐつぐつりヴぁりヴぁー』

 リヴァイアサン大祭は一年に一度のお祭り。
 人々は思い思いにその特別なひとときを、それぞれの大切な相手と過ごしているから、外からはそのさわさわとした喧騒が耳に届くけれど、ノドカとクシロはお家でゆっくりあったか過ごすことを選んだ。
 恋人同士で過ごすのだから、どこにいたって何をしたって特別な日になるのは間違い無い。
 いつものように男の子ながらクシロがお鍋の世話をしている横で、ノドカはうきうきと待ちきれない様子。
 ぬくぬくとコタツに入って、奮発したお鍋がぐつぐつ煮えるのを青い瞳で見守っている。
 お鍋の横には白菜に人参、お豆腐、シメジにエノキ、お魚の切り身にお肉、締めのご飯と卵まで準備万端だ。
 そんな日常の延長のようなひとときだけれど、付き合って1年以上になる2人にとっては最初のようにいちゃいちゃはしなくてもドキドキは安定に変わり、大事な日を大好きな人と過ごすことに幸せを感じるようになっている。
 飽きたからではなく、一緒にいるのが当たり前になったから。
 幸せだ、と感じていた。
「まだお肉とお野菜入れたところだから、もうちょっと待ってねー」
 材料とお鍋は準備したから、と調理はクシロに任せる姿勢のノドカを微笑ましく見やり苦笑する。金色の瞳が優しく細められていた。
 それでも袖を汚さないよう留意しつつ箸を扱う手は止めずに作業すれば真っ白な髪がさらりと流れる。
 お腹をぐーぐー鳴らして、ノドカは待つ。
 そして、何気ない一言を口にした。
「あ、クシロくんお肉はしっかり真ん中まで火が通ってからねー」
 こう言えば、クシロはきっと慎重になって火加減を見るに違いないから、ノドカは自分が先にお肉にありつける、なんて考えていたのだ。
 ノドカはやっぱりノドカだなぁ、とクシロは思いつつ、鍋を乗っけたコンロの火加減を星霊バルカンに手伝ってもらいながら調節していた。
 ノドカは思う。
 ふと気付けばこんなふうに過ごすのが当たり前になっていて、色々あるけれど来年もまた次の年も、同じようなことしてるのかな、と。
 きっと、特別なお祭りだからって特に肩肘はる必要も無いのだ。
 何気ない一言や、取るに足らない日常ほど、かけがえの無い幸せなのだと2人は知っていた。
 クシロは思う。
 いつまでもこんな風に仲良く過ごせたらいいな、と。
 ふつふつ煮える鍋のいい匂い、笑顔。ぽかぽかな幸せを2人で味わうひとときはもうすぐ。
イラストレーター名:○島