■リヴァイアサン大祭2013『雪花の誓い』
結婚式会場。そこから、二人の男女が並び出てきた。
一人は、ローズメリア。
その隣には、タキシード姿のミラ。彼は、夫になっていた。ローズメリアの夫に。
交際を始めたのは、去年の七月。それが、こうなるとは。
長かったのか、短いのか。良くわからないけど……。
「……色々、あったわね」
「ん? ああ、そうだね」
ローズメリアのつぶやきに、ミラは相槌を打った。
純白のドレスを着たローズメリアは、手のブーケに目を落とす。それは、ウェディングドレスに合わせたかのように、『白』の花でまとめられていた。白い花弁の百合が中心に据えられ、ローズメリアの幸せが形を取ったかのように、美しさを周囲に見せている。
ミラの傍らにはシュー……彼の妖精。そして、二人の周囲には……二人を祝福する大勢の人たち。
しかし……ローズメリアはブーケを見て、ふと……思い出した。
妹の事を。リリィの事を。
病死した妹、愛しい妹、今この世にはいない……妹。
この場に、リリィがいてくれたら……祝福、してくれたかしら。
二人を包む柔らかな光は、天使のはしご。そして、周囲を舞うは粉雪。
「……きゃっ!」
物思いにふけっていたローズメリアは、ミラに抱き上げられ、驚きの声を上げた。
夫が、ミラが……結婚式の緊張から解き放たれた彼が、新妻を抱き上げたのだ。
「……重くない? 大丈夫?」
突然抱き上げられ、ちょっと不安。しかし、ローズメリアのその問いに、ミラはかぶりを振った。
「いや……軽いよ。軽くて、ちょっと驚いた」
そう言って、微笑むミラ。その笑顔を見ていると、安心できる。安堵できる。
そう、彼もまた、リリィと同じ。リリィと同じく、自分にとって大切な人。
「……ローズメリア」
ミラが、彼女へと言葉をかける。
「これから、宜しく」
それに、ローズメリアも応えた。
「ええ。これからも宜しくね、ミラ。……シューも」
愛しき夫へと、そして彼の妖精へと、彼女は言葉をかけた。
愛しい。愛しくてたまらない。この想いを、贈り物としたい。
「んっ……」
「……!?」
歩き出そうとしたミラの頬へと、ローズメリアは口づけを。いきなりのその口づけに……ミラはちょっと驚き、ローズメリアを抱き上げている腕が揺れた。
「……もう。誓いのキスを済ませた後なのに、頬へのキスで動揺しないでくれる?」
苦笑しつつ、ローズメリアはミラの腕の中にいる事の幸せをかみしめていた。
そして……、改めて、ミラが一歩を踏み出すのを実感する。
これからは、二人分の足跡と、思い出とが……寄り添って、刻まれていくのだろう。
……リリィ。
亡き妹に、ローズメリアは語っていた。
どうか、私たちを……見守っていて。あなたの思い出とともに……私は、新たな人生を歩きはじめます。
粉雪と光が降る中。新郎新婦は……未来へと歩きはじめていた。