■リヴァイアサン大祭2013『whisper.』
目の前の少女を愛する気持ちは本物だ。しかし、人の道を正しく歩むものでもない。だから証が欲しかった。目に見える形を持った、証が――。今日は年に1度の特別な日。だから、他の人には言えない、2人だけの特別な日にしようと、サイレントとアレサは静かに雪が降り続く森の中を訪れていた。
「なんだか……照れくさいね……」
サイレントは、はにかんだ笑顔で口を開いた。
「はい。……でも、それが今は、たまらなく心地いいんです」
その言葉を静かに返すアレサは幸せそうに微笑んだ。
2人の少女の口からは、言葉と共に白い息。赤くなっている頬は、寒さのせいだけではない。
くすぐったそうに笑い合って、2人は誰もいない建物の中に入った。
誰もいない静かな空間。照明は窓から差し込む月明かりだけ。
静かな壇上で向かい合うサイレントとアレサ。
「その白いドレス、凄く素敵だね」
存在感のある胸を強調する大きく胸元の開いた白いドレス。腰の大きな白いリボンが可愛らしい。アレサの白く長い髪と愛らしい顔に良く似合っている。サイレントは頬を染めながら微笑んだ。
「その髪飾り、綺麗な黒髪に凄く似合ってます」
アレサとは対照的に、黒いドレスのサイレント。漆黒の長い髪を1つに纏めている白い花の髪飾り。全体的にシックな黒で統一された中、その白い花がアクセントになって可愛らしい印象を与える。アレサも微笑んで賛辞を返した。
そんな他愛ない話をして、お互いの緊張をほぐして――。
「病める時も苦しいときも――んぅ」
言葉を紡ぐサイレントの唇に、アレサがどこか困ったような笑みで、そっと指を当てた。
「愛してください、シャオレン。これからもずっと」
繰り返し念を押すような眠たい前口上はいらない。絶対に欲しいものなら、そんな曖昧な求め方をしないでほしい。そんな想いの篭った、シンプルなアレサの誓いの言葉と満面の笑顔。
その想いを察したサイレントもそっと笑って、誓いの言葉をやり直す。
「アレサを愛するよ。ずっと。だから愛して」
見つめ合う2人。導かれるように指を絡ませ、お互いの体を抱き寄せ合った。
――月明かりに照らされる影は、やがてひとつになる。
この世の誰が認めなくても、2人はこの時結ばれた。
特別なこの日のプレゼントは、ふたりの未来。