■リヴァイアサン大祭2013『Reassurance 〜大切な場所〜』
暖炉の炎が、暖とともに柔らかな光を、部屋へ投げかけている。その光を浴びると、アルテミシアは自分が安らいでいるのを実感した。暖炉の前で丸くなっているのは、『白』と『荷車』。暖をとり心地よさそうに、二匹は寛いでいる様子だ。
セレスタイト……アルテミシアの妖精もまた、丸くなっている『白』をベッド代わりにうつらうつら。
が、暖炉の横。窓から見える外は暗く、寒々しい。
「ふう……少し、疲れたな」
『白』と『荷車』の主にして、この部屋の主は、アルテミシアへと声をかけた。
ヴォルフ。アルテミシアにとって、かつては恩人、かつては友人。そして今は、アルテミシアの恋人となっている青年。
暖炉の前には、椅子が一つ。それに腰掛けているヴォルフは、彼女へと微笑みを向けていた。それに微笑みを返すアルテミシア。
「リヴァイアサン大祭、楽しかったですね」
「……アルテミシア?」
ヴォルフの膝元へと、甘える猫のように、彼のペットの『白』が甘えるように……アルテミシアはしゃがみこんで、その頭を、顔を預けたのだ。
「来年も……一緒に、こうしていたいです」
だから、と、言葉を続ける。
「……来年は、無茶を……しないで下さいね。これからも、ずっと……一緒にいたいですから……」
「ああ、そうだね」
「来年のリヴァイアサン大祭、今度はどんなイベントがあるでしょうね?」
「また、今年行ったアレみたいなのがあればいいな。覚えているかい? 前に行ったあれに……」
他愛ない会話が、暖炉の炎に照らされながら交わされる。とても……暖かい。
暖炉の近くだから、だけでない。ヴォルフの膝枕だから、大好きな人と一緒だから、長い時間を一緒に過ごした人と一緒だから、安心できて、暖かいのだろう。
今まで、何度こうやって膝枕してもらったっけ。これから、どれほど膝枕してもらえるのかな。
ふわ……なんだか、眠くなっちゃった。もうちょっとだけ、こうしてたいけど。でも……。
「すぅー、すぅー……」
「……まったく、風邪をひくぞ?」
薄い眠りの膜越しに、ヴォルフがそんな事を言ったように聞こえた。
祭りを回った時の疲れが出たのか、アルテミシアの身体を眠気がつつむ。それを手伝うのは、暖炉からの暖気と、炎が作る揺らめきの影。そして、ヴォルフの……匂い。
「……雪?」
ヴォルフが視線を窓に向けると、そこに彼は見たようだ。
空から、白い欠片が降り始めている様子を。
ぱさり……と、ヴォルフが自分へと上着をかけてくれるのを、アルテミシアは感じた。
心地よさと、安心感。ヴォルフが居てくれるから、こんなに……。
アルテミシアの思考は、そこで途切れた。
そして、膝枕をしているヴォルフは……愛おしそうに、アルテミシアを愛撫し続けていた。
炎は優しく燃えながら、二人を温め続けた。二人の事を、見守るかのように。