■リヴァイアサン大祭2013『二人だけの聖なる夜』
太陽が西の空に沈みかけ、茜色から群青色の綺麗なグラデーションの空には純白の雪が静かに降り続き――。「わぁ、これってマナミ様の手作りケーキですか? とても美味しそうですね」
丸テーブルに運ばれたケーキを見てフェンネルが歓声を上げた。
ここはマナミが経営する小さなバー。
10人並んで座れるカウンターと、丸テーブルが3つ。照明の淡い灯りがうっすらと店内を照らす明るくはない店内。
「はい、私が作りました。素敵と言って貰えて嬉しいです」
マナミは、ふわりと微笑みながら、3段に重なった豪華なケーキに蝋燭を乗せていく。一番上にはフェンネルとマナミを模した砂糖菓子の人形をちょこんと飾った。そして順番に1つずつ蝋燭に火を点しだす。
「これって食べるのが勿体ないくらいに素敵な仕上がりですね」
フェンネルの瞳はキラキラ感動に輝き、ほぅ、と溜息が漏れる。
最後に頂上の少し大きな蝋燭に火を点し終えたマナミは、
「これで完成ですよ。あ、いまジュースをお持ちしますね。……何がいいですか?」
フェンネルを振り返って微笑んだ。
「僕はオレンジジュースを頂きたいと思います」
「はい、ちょっと待ってて下さいね」
フェンネルのリクエストを聞くと、カウンターの向こうに飲み物とグラスを取りに行くマナミ。
フェンネルはマナミがカウンターの向こうに消えても、その素晴らしいケーキをじっと見つめている。
マナミはオレンジジュースの瓶とグラスを2つ持ってすぐ戻り、
「では、乾杯しましょうか、フェネちゃん」
オレンジジュースを注いだグラスを1つはフェンネルに渡し、1つは自分で持つマナミ。
マナミからグラスを渡され「ありがとうございます」と受け取ったフェンネルは、
「マナミ様、乾杯ですー♪」
グラスをマナミの方に少し傾けた。
「乾杯、フェネちゃん」
チンッと小さくグラスが鳴ると、お互いグラスを口に付ける。
一口オレンジジュースを口に流し込むと、少しの間、二人ともじっとケーキを見つめていた。ゆらゆらと優しい灯を纏ったケーキを。
静寂の中、優しい灯に照らされたフェンネルとマナミの顔も柔らかく輝く。
「いつもありがとうフェネちゃん。これからもずっと宜しくね」
静寂を破ったのは柔らかいマナミの声。
「マナミ様、僕は貴女のガーディアンである事を誇りに思ってますよ」
応えるフェンネルの声も柔らかい。
ゆらゆら揺れる優しく柔らかい灯のように――。