■リヴァイアサン大祭2013『大祭、お散歩、マフラーぐるぐる。』
「雪だー! 大祭だー!」ふわふわと降り続く雪に、パルシェレートが瞳を輝かせながら歓声を上げた。
「雪か」
パルシェレートと長いマフラーを一緒に巻いているヴァントが、空を見上げながら呟く。
(「毎年見ているけれど、今年はいつになく雪がふわふわしている気がするな」)
彼がそう感じるのは、きっと、自分もふわふわした気分になっているから。
パルシェレートから、「なが〜いマフラー一緒にぐるぐるしよう!」と提案されて、ヴァントに断る理由はない。
一緒のマフラーでかなり緊張しているヴァントだったが、必死に平然を装っている。
(「やばい。密着する機会なんて早々ないことだべっ」)
内心ではドキドキと心臓がうるさい。
「離れないようにお手手もぎゅーってしてようね!」
パルシェレートは、楽しそうにヴァントの手を握った。
「お、おう」
手からも感じるパルシェレートのぬくもりに、顔まで熱くなってくる。
「にくたん、寒くない?」
パルシェレートは、右腕で抱えている子ぶたに笑いかけた。
(「くそう。ちゃんと告ったはずだぞコンチキショー!」)
嬉しいのに、本当に嬉しいのに、胸が苦しい。ヴァントは照れ臭くて、ついついパルシェレートから目を逸らしてしまう。
「およ? ……ヴァントたん、どしたんだに?」
ふとヴァントを見上げたパルシェレートは、小首を傾げた。
「ぐるぐるぎゅー、嫌だった?」
不安そうな瞳で。
「い、いや……う、嬉しくてちょっと緊張しててな」
ヴァントは、目を逸らしたまま、繋いでいるパルシェレートの手を、自分の胸に当てさせる。
「……お、おお? にひひ、どきどきしてるぞー? なんだかパルもどきどきしちゃうぞ! 一緒だに?」
楽しそうに笑うパルシェレートの顔がうっすら赤くなった。それは、きっと寒さのせいだけではないだろう。
「よし、帰りは美味しいものを買って帰ろうか」
ヴァントは、にかっと笑顔を浮かべた。
「うんっ美味しいの食べたいな!」
パルシェレートは満面の笑みで頷き、
「それとね、帰ってもずっと一緒にいようね」
ほんの少しだけ、恥ずかしそうに付け加える。
その言葉で、ヴァントの顔が更に真っ赤になったのは言うまでもない――。