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2人でリヴァイアサン大祭

静寂の大盾・ジーク
虚ろな光の螺旋・アートルナ

■リヴァイアサン大祭2013『お味はいかが?』

 大祭を楽しみ……家に戻った二人。
 しかし、これからは別のお楽しみ。恋人同士の二人で過ごすひと時……ともにディナーを作り楽しむひと時が、まだ残っている。
「さて、今日は手伝いますよ。ボロ雑巾のごとく使うが良いのです」
 そう言う恋人・アートルナを前に、ジークはちょいと言葉を失う。
「……でも、アートルナと一緒に料理できるのは、嬉しいな」
 そう返したら、アートルナが嬉しそうな表情を浮かべた……ように見えた。あまり『表情』を浮かべない彼女であるが、時折、笑顔を浮かべたような顔を見せてくれる。
 そんな恋人からもらった濃紺のエプロンを身につけ、ジークはキッチンへ。
 エプロンを送ってくれたアートルナも、ジークの料理を手伝ってくれるという。
「それじゃ、お願いしようか」
 微笑みを向けると……アートルナの顔が、少し赤らんだように見えた。

 良い匂いが、食卓の上に広がり踊っている。それを見て『我ながら良い出来だ』と、ジークは得意げ。
 中心に置くのは、大きな丸いホールケーキ。
 そしてローストチキン。タレ焼きや唐揚げも良かったが、塩コショウでサッパリめに仕上げた自信作。その周りには、エビ入りサラダに焼きソーセージ、サーモンとアボガドのバルサミコソース。
 だがなんといっても、一番の期待作は……アートルナが今運び、食卓に置いた、デミグラスソースをたっぷりと使った一皿。
 焼いたハンバーグを、温野菜と共に旨味たっぷりのソースで煮込んだ、煮込みハンバーグ。
 それら料理を卓上に運び並べると、見ているだけでつばがわく。
「それじゃあ……乾杯」
「乾杯」
 向かい合った席に着き、ジュースのグラスで乾杯。
 満ち足りた気分で、二人は料理を味わい始めた。
「……うん。うまい」
「おいしい、ですね」
「今日の料理は、格別美味いな。二人で、一緒に作ったから、かな?」
 にこやかに言ってみると、アートルナはふと思いついたように……ハンバーグの一切れをフォークに差し、ジークの口元へと運んできた。
「え? 何を……」
「そういえば、ありませんでしたね? 直接キスはあっても、間接キスは」
 確かに。
 アートルナが口元に運んでくれた一切れを、ジークは口に入れ、噛んだ。
「不思議な人です。そんなに赤くなって」
 彼女に指摘されるまでもない。耳まで熱くなっているのを、ジークは実感していた。
「……お前が、赤くさせてるんだろ?」
 まったく……と、溜息をついてみせるが、恋人への愛しい気持ちは隠し切れない。
 なら、その気持ちを言葉にして紡ごう。
「……メリー・リヴァイアサン。アートルナ」
 ジークの言葉に応えるように、アートルナも言葉を。
「メリー・リヴァイアサン、ジーク」
 暖かい気持ちが、部屋の中に、自分と彼女の中に生じるのがわかる。
 ジークは、暖かな料理と共に、それを味わった。
 そして、願った。
 来年も彼女と共に、こうやって過ごせるように、味わえるように、と。
イラストレーター名:おこげ