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2人でリヴァイアサン大祭

聖者の天秤・トゥー
月影に舞う銀狼・ゲオルグ

■リヴァイアサン大祭2013『傷持つ銀狼と傷持つ天秤の雪の夜』

「絶景だな」
 ゲオルグが満足そうに呟いた。
 静かに降り続く雪。雪化粧をした木々と、澄み渡る夜空に浮かぶ月。
「そうでしょ〜? 寒い日には、あったかい温泉! しかも素晴らしい景色も眺められて更にオトク!」
 トゥーは、相棒であるモモンガのエドワードを指先で撫でながら、自慢げに笑う。
「あぁ、トゥーの城は凄いよな」
 エドワードを頭に乗せて、湯に浸かっている相棒――黒狼のナハトを撫でながら静かに口を開いた。
「今の姿があるのは、皆のお陰だけどね」
 ここはエルフヘイムにある花の宮殿敷地内の温泉。以前は沢山のラビシャンが住むラビシャン王宮となっていた。それを多くのエンドブレイカー達がラビシャン達を討伐する。そして、かつての花々に囲まれた美しい宮殿として蘇らせたのが、トゥーなのだ。
「そうだな。だが、ここまで見事に復活させたんだ。胸を張って良いんだぞ」
 ゲオルグは朗らかに笑う。一回り以上歳の離れた友人に。
「ありがとな。しっかし、ゲオルグ〜、いつ見ても酷い傷だね〜」
 トゥーは、あんまり褒められるは照れくさかったのもあり、話題を変えた。
(「あの傷じゃ生きてるのが不思議なくらいだよね……よっぽど大変な目にあってるんだろうな……」)
 右肩から腹部くらいまで斜めに走る、長く大きな刀傷のような傷跡。それが3本も。大きな獣の爪痕のようにも見える。その他にも細かい刀傷がたくさん。
「トゥーこそ、数え切れない傷だな」
 ゲオルグも、自分こそ古傷だらけの体じゃないか、と楽しげに笑った。
(「あの細かく鋭い感じは、鞭か何かだろうか……」)
 ゲオルグの傷のような大きさはないが、細かい裂傷が無数に刻まれている。
 ――パシャン!
 2人がお互いの傷から過去を想像していると、何かが湯に落ちたような水音が響いた。
「エド君!」
 トゥーが叫ぶ。先程までナハトの頭の上にいたエドワードがいない。
 しかし、トゥーが動くより先に、ナハトが頭から湯に突っ込み、再び顔を上げた時には、口元にエドワードを咥えていた。
「偉いぞナハト」
「ありがとな〜」
 ゲオルグは目尻を下げて、よくやった、とナハトを撫でる。まるで自分の子供を褒めるような優しい眼差しで。トゥーもナハトに礼を言いつつ、エドワードを受け取った。
「しっかし、男2人で温泉に浸かって特別な夜か〜……嫌じゃないけど……なんかねえ」
 トゥーは苦笑しながら、左手ににエドワードを乗せ、右手の人差し指でその頭を撫でる。すると、エドワードはぶるぶるっと体を震わせて水気を飛ばした。
「エドもナハトも仲良く楽しそうにしているんだから、いいんじゃないのか……こんな夜も」
 再び、ナハトの頭の上に移動したエドワードを微笑ましく眺めながら、ゲオルグが口を開く。

 ――こんな特別な日も悪くない、2人は、いや、2人と2匹は、穏やかな時間をゆったりと楽しんだ。
イラストレーター名:黒丹