■リヴァイアサン大祭2013『あなたとわたし』
そこは、小さな式場。中には、小さな祭壇。正面にステンドグラス。
そこに居るは、愛を誓い合おうとしている、二人の姿。
二人を除き、人の姿は無い。そのせいか、そこは寒々しさと同時に……神聖で、厳かな空気を醸し出していた。
純白のウェディングドレスに身を包んだヴィクトリアは、夫へと……愛するクルードへと、その姿を見せていた。
既に、一昨年前の秋に夫婦になってはいた。が、式は挙げていない。
式は挙げなくとも良いと思っていたけれど、こうやってドレスを着て、夫の前に立ってみると、嬉しいと思う。愛しく……思う。
純白の、エンパイアラインのドレス。その手には、小さなブーケ。
この姿を……クルードはどう思ってくれるだろうか?
「……きれいだよ、ヴィタ」
目の前で、タキシードに身を固めたクルードは……静かに、そう言った。
「……大いに、期待してたが……流石は、俺の嫁さんだ」
「クルードさん……」
嬉しさと、愛しさ。それに、少しの恥ずかしさ。
「綺麗だ……世界のどんな女性よりも、ヴィタの方が綺麗だ……」
クルードのその言葉が、ヴィクトリアの耳に、心に……甘く染み渡る。
結婚の宣誓を唱える者も、それを見守る者もいないこの場所で……。
二人は、互いに誓いの言葉を口にする。
「「健やかなる時も病める時も」」
「「喜びの時も悲しみの時も」」
「「富める時も貧しい時も」」
「彼を愛し」「彼女を愛し」
「彼を敬い」「彼女を敬い」
「彼を慰め」「彼女を慰め」
「彼を助け」「彼女を助け」
「「この命ある限り」」
「彼を」「彼女を」
「「愛し続ける事を誓います」」
「…………」
互いへの、神聖なる誓い。
胸がつまる。幸せに胸がいっぱいになって、嬉しくなって、胸がつまる。
「……ヴィタ、この世界で……誰よりも、君を愛している」
愛する夫から、言葉が放たれた。
……聞きたかった言葉、何度も聞いた言葉、そして……これからも聞きたい言葉。
ならば、こちらからも言おう。彼が聞きたいだろう言葉、何度も聞かせた言葉、そして、これからも聞きたく思う言葉を。
「愛してますよ、クルードさん。……この世界中の、誰よりも」
そして、目を閉じ……顔をクルードへと向けた。
クルードもまた、目を閉じ……静かに、妻の唇へと、唇を重ねた。
愛し合う、二人の誓いの口づけ。長く、長く唇を重ねあう。
「……クルードさん」
唇が離れ、互いに見つめあい……ヴィクトリアは微笑みを浮かべた。
「……ヴィタ」
クルードもまた、彼女へと微笑みを返す。
「これからも、宜しくな。何時か……」
死が、二人を別つまで。
しかし、ヴィクトリアはそれにかぶりをふった。
「いいえ。たとえ……」
たとえ、死が二人を別けたとしても……この想いはずっと……。
「この想いは、ずっと変わりません」
「ああ……そうだな。ずっと、一緒だ」
ステンドグラスの美しい光が、愛し合う二人を彩り、いつまでも輝き続けていた。