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2人でリヴァイアサン大祭

花紺青・ユウ
砂柩・ゼス

■リヴァイアサン大祭2013『円舞曲』

「踊っていただけますか?」
 ゼスが笑顔で手を差し出してきた。
「でも、私は……」
(「踊るのが苦手だ」)
 ユウは困惑しながら視線を逸らす。
 正確には、踊るのが、ではなく、踊るのも、苦手なのだ。ユウは、剣術以外の腕前は壊滅的ななのである。
 以前、ゼスと共に行った林檎の森で、つまみを差し入れてもらった。それに挑んだユウだったが、素晴らしく個性的な前衛芸術を作り出した事もある。
「気にしないで下さい。ね?」
 ゼスは、にこっと柔らかく微笑んだ。
 恐る恐るその手を取るユウに、
「そのドレス、凄く似合ってますよ」
 と付け加えて。
 今日のユウは深紅の肩と背中を大きく露出したパーティドレスをまとっている。裾は、ふわりと3段になったアシンメトリー。髪は赤と白の大輪の花の髪飾りでアップにしていた。
 そんな鮮やかな彼女をエスコートするゼスは、黒いジャケットの貴公子然とした正装。2人が並ぶと、実に見栄えのするコントラストを奏でている。
 緩やかなワルツが流れ出した。リードするゼスに身を任せて、動きに合わせるユウ。そのドレスの裾がふわりとひるがえり、深紅の花を咲かせる。
(「ちょっとだけ、どきどきしてしまう……ゼスはおとうさんで、おにいさんで……後はなんだろう?」)
 ユウは、必死にゼスの動きに合わせつつも、自分をリードしてくれる穏やかな顔を見て考えた。
(「ぁ……」)
 考え事をしていたユウの足が、床ではない柔らかい感触を感じる。その足が感じた感触とは、ゼスの足。
(「また……! ゼスごめん……!」)
 緊張で強張っていたユウの顔は、どんどん申し訳なさそうな、情けない顔になっていく。ゼスの顔は時折、少し歪むも優しい笑顔をキープしていた。しかし、その笑顔は、どこか楽しそうで。
(「どぎまぎしてる私を見て、楽しそうにしてる……気がするのは気のせいか」)
 情けない顔をしていたユウの目が、軽くゼスを睨む。
「……」
 それに気付いたゼスは、無言のまま綺麗に微笑んだ。
(「でも――こういう時間が、とても優しくて素敵な時間、というのだろう……あっ」)
 考え事をしていたユウは、何度目になるか分からないゼスの足の感触を感じる。
「……くす」
 一瞬眉を顰めたゼスが、小さく笑みを零した。
(「あ、また……ゼスってば、いぢわるだ」)
 むぅ、っと上目遣いで軽く睨むユウ。

(「今度はもう少し上手く踊れるようにしてくるね、絶対だから」)
イラストレーター名:まさゆみ