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2人でリヴァイアサン大祭

夢見る暴力・フィグ
星蝕・ロットバルト

■リヴァイアサン大祭2013『家族と迎えた日』

 外は凍てつくような寒さであるのに、花々が見事に咲き乱れる温室。
 ガラス越しには純白の雪が降り続く夜空を星霊リヴァイアサンが優雅に泳ぎ――。

 共に過ごすこの特別な日は何度目になるだろうか。
 ロットバルトの従者であったフィグが、何処へだろうと何処までも着いていく、そう誓ったのもこの日だ。
 主従として、マスガディとして、婚約を経て、そして――。

 小ぶりのテーブルの上には、食後の紅茶とケーキ。
 手を伸ばせばすぐに相手の温もりを感じられるそのテーブルを挟んで、静かで穏やかな時間を共有し合う家族となった2人。
 二人が腰掛けて尚空席になっている小さな椅子。その椅子は遠くない未来に増える新しい家族の為の空席。
(「ぜんぶ教えてくれたのはアナタだった……」)
 美味しいものがより楽しめる席を。しあわせで零れる涙を。さみしくない夜を――。
 幸せそうにケーキを口に運ぶフィグ。そう、正に今が美味しいものをより楽しめる席。
 幸福感に包まれるフィグの頬に、ふとロットバルトの指先が伸びた。頬にかかる髪を優しく耳にかけてやる。その手にフィグの手が重なった。
(「この手は、この温もりは、ワタシのもの」)
 ロットバルトの手の温もりを頬から、そして手からも感じ、愛おしそうに瞳を閉じる。
 いつも深いシワを刻むロットバルトの眉間も自然とシワを消した。フィグの仕草と表情に、愛らしい、愛おしいと、溢れる想いが彼の表情を柔らかく溶かしている。
 ふと瞳をを開いたフィグ。そのアメジストのように綺麗な瞳で真っ直ぐロットバルトを見つめる。その視線がしっかり受け止められると、
「ロット、すきよ。すき」
 静かに囁いた。溢れる愛しさを込めて。
「……」
 ほんの少しだけ口元を緩めたロットバルトは、無言のままフィグの唇に優しい口付けで返答する。
 言葉を告げるより、何より強く溢れる想いを伝える方法。
 その唇を受け入れ、幸せそうに閉じられたフィグの目元には光る雫が零れた。
 
 これまでも同じ日を違ったように重ねてきた2人。次に重ねるときは、小さな空席を新しい家族に埋めてもらって――。
イラストレーター名:吉江ユタカ