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2人でリヴァイアサン大祭

白銀の迷い子・リティア
蒼き碌風・テラ

■リヴァイアサン大祭2013『暖かいのは 君の あなたの』

 今日はリヴァイアサン大祭。家族や友人、恋人達が楽しげに街を行き交う日。
 そんな中、テラとリティアの二人もまた旅団の仲間と催すパーティの準備のため、買い出しに来ていた。
 すれ違う仲の良さそうなカップルを意図せず目で追って、テラはぼんやりと思う。――ちょっとデートみたいだよね。
(「まぁ、リティアは俺の大事な妹みたいなもんだし」)
 自分の隣をとてとてと歩くリティアの姿は、とても愛らしくテラの瞳に映る。
 ……変な気とかは起こさないよ? いや本当に。心中の言い訳が誰に向けてかなんて、彼自身にしかわからない。
 確かに街の雰囲気に流されてちょっと浮かれてる感は否めないけれど。
 そしてそんな風に浮かれていたのは、リティアもまた同じだった。
 エンドブレイカー達や世界を取り巻く状況は慌ただしいけれど、仲の良い旅団の皆と過ごせるのはやっぱり嬉しくて。リティアの口元は緩んでいた。これから皆でパーティだ、と思うと自然とその足取りも軽く、弾んでしまっている。
 あと買い忘れはないでしょうか、と尋ねようとしたリティアは、そこでふと気付いた。隣を歩くテラがゆっくりと……自分と歩調を合わせて歩いていることに。
 そんな優しさに、申し訳なさと嬉しさがくっついて縮こまるリティア。けれどテラ自身も、自分より小さな歩幅に合わせて歩くのは少し楽しい。そんな風に思っていた。いつもよりゆっくりと景色が動いていくことも、一緒に歩くこと自体も。
 そんな彼を横目で見つめてから少しはにかんだリティアは、そっと息を吐いた。
 ぷかり、と目の前に浮かんだ色は、真っ白。
「寒いですね」
「寒いねー」
 笑いながら、同じく息を吐き出して少し震える仕草をしてみせたテラにリティアも笑った。
 それからテラに向き直って、ゆっくりと手を伸ばす。
 すると首を傾げたテラも少し屈んで、ちょっぴり背伸びをしたリティアとの距離が縮まる。そして、
「でも、手袋してるからあったかいんですよ」
 ぽふり。寒さで少し赤らんだ頬を、手袋越しにふたつの掌が包んだ。
 不意に触れたその温かな感覚と感触に驚いて、テラは僅かに瞬いた。けれどそれは一瞬のこと。
「……ほんとだ。あったかいね」
 微笑む彼女につられるように、テラは優しく微笑んだ。
 そうして、思う。
 やんわり赤く染まった頬と、手袋越しに伝わる温もり。
 それが、寒さと手袋のせいだけじゃないと良い。
 ――なんて、こっそり願うのは、この特別な祭りの魔法のせいだ。
 
 彼の微笑みに安心したリティアも、そっと心の中だけで囁いた。
 ……本当は、手袋のおかげじゃない。
 あったかいのは、貴方と一緒だから。
 けれど、それは秘密。 
 
 その後、旅団に帰ってから仲間達と話すテラの横顔を見ていたら、リティアは自分の行為がとても大胆だったと今更気付いて、一人恥ずかしくなったのだけれど。
 それも、彼女だけの秘密。
イラストレーター名:ゆきの