■リヴァイアサン大祭2013『あなただけのほんとうのわたし』
町がリヴァイアサン大祭で賑わっている中、ヴィルヘルムとロスヴィータは、ある温泉宿を見つけた。温泉好きの二人は、すぐさま宿をそこに決め、さっそく温泉へと入ることにする。
幸いにも人気はなく、二人っきりで入ることができた。
「温かい、ね……」
「ええ。偶然とはいえ、良い温泉に巡りあえましたね」
ロスヴィータを膝の上に乗せて、ヴィルヘルムは笑顔を見せる。
しかもここは露天風呂。外の凛とした寒さが、体の火照りを和らげてくれるかのようだった。
ちゃぷんと湯を揺らし、ヴィルヘルムはロスヴィータを抱きしめる。
ロスヴィータはヴィルヘルムの腕をそのままに、気持ち良さそうに体を預けていた。
「気持ち……いい……」
「それは、この湯の方ですか? それとも……」
「はうっ……ヴィルの、いぢわる……」
見上げるような、熱っぽく見つめるロスヴィータの潤んだ瞳に、ヴィルヘルムは満足そうに抱きしめる手を強める。
「あっ……」
びくりと体を震わせ、ヴィルヘルムの愛を感じながら、ロスヴィータは気づいた。
空からゆっくりと白い綿毛のような、雪がちらついているのに。
たぷんと湯船から、ロスヴィータは手を伸ばした。
暖かいその手に落ちた雪は、すぐに溶けて消えてしまって。
けれど、舞い落ちる雪は、一つ、また一つと増えてゆく。
「綺麗……だね……」
うっとりとした表情でロスヴィータが口を開いた。
「雪、ですか……少し寒いと思ってたんですが、雪が降ってきましたか」
「雪は……嫌い?」
尋ねるロスヴィータにヴィルヘルムは笑みを浮かべる。
「いいえ。その逆……好きですよ。まるでヴィーの肌のように白くて綺麗で」
そう言われて、ロスヴィータは思わず俯き、頬を火照らす。
「ヴィー?」
「そ、そんな言い方、恥ずかしいよ……」
そういうロスヴィータの顔をそっと上げさせて、ヴィルヘルムは告げる。
「じゃあ、こう言いましょうか? 雪も綺麗ですが、こんな風に顔を火照らすヴィーの方が、とても綺麗だって」
「だ、だから、それ……反則っ……」
くすくす笑うヴィルヘルムを、ロスヴィータはぽかぽかと叩く。
叩いてはいるが、全く痛みもない軽い叩きに、ヴィルヘルムはより、その笑みを深めていく。
「さて、そろそろ続きを始めてもよろしいですか?」
「え? あっ……ヴィル……んん……」
雪が舞い散る露天風呂の中で、二人は深い口付けを交わして。
二人が愛を確かめるたびに、水面が揺れていく。
その間も雪は優しく降り注いでいた……。