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2人でリヴァイアサン大祭

旅人・イズトライ
炭酸飲料・ソーダ

■リヴァイアサン大祭2013『非リア二人のリヴァ大祭〜買い物してただけなのに〜』

「いやー、この時間だったから、もう半分諦めていたのですが……良いケーキが買えましたね♪」
 ケーキの箱を持ったイズトライが上機嫌で笑いかける。
「シャンパンも良いのが手に入ったしな。予約してなかったから、正直心配だったけど良かった」
 綺麗にラッピングされたシャンパンを抱えるソーダも笑顔で返した。
「お祭りだから夜景も綺麗で、買い出し係で得しましたよ」
「たしかに、リヴァ祭だけあって夜景も綺麗だな……」
 笑顔のまま口を開くイズトライに、軽く空を見上げたソーダも同意した。
 ――リヴァ祭。正式名称はリヴァイアサン大祭。一年に一度、星霊リヴァイアサンが半実体化して優雅に空を泳ぐ日がある。その日には色々なイベントが行われるお祭りなのだ。
 友達とパーティをする事になったイズトライとソーダは、その買出し係なのである。
「……カップルばっかりだな」
 空を見上げていたソーダの視界に、楽しそうに歩く恋人達が映った。
「……あぁ、そういう日でしたね。リヴァ大祭って、そういうお祭りっすよね……」
 イズトライはソーダの言葉に、思い出したように口を開き、最後の方は不気味に薄く笑う。
 このリヴァイアサン大祭、昔はハイエルフとダークエルフがパートナー同士の絆を確かめ合う日だった。だが、『戒律』がなくなった今は、大切な人同士の絆を確かめ合うお祭りとして催されている。
「……そういえば、そうだったな……」
 先程まで良いシャンパンが手に入ったと機嫌の良かったソーダの目も、死んだ魚のように曇った。そして、
「……リア充爆発しろ」
 ぼそっと小さく呟く。
「きっと、ここにいるリア充達は『見て。綺麗な町並み』『君の方が綺麗だよ』とかやってるんですよ」
 ソーダの怨嗟の声に同調するように、イズトライは目が据わったまま、薄ら笑いを浮かべた。
 2人の周りだけ、華やかな街とは対照的な黒いオーラが満ちて行く。
「……」
「……」
 黒いオーラに包まれた2人は暫し無言で、明後日の方へ視線を泳がせていた。
「……見て下さい、綺麗な町並みですね」
 ふいにソーダに明るく笑いかけるイズトライ。
「君のほうが綺麗だよ……」
 その言葉に、ソーダの顔はイズトライの方を向いたが、相変わらず曇った目のまま目を合わせず、感情の篭らない冷めた声で答えた。
「……正直すみませんでした」
「寒いな……」
 イズトライは、そっと顔を逸らして謝り、身も心もすっかり冷え切ったソーダが冷静に呟く。
 その時、長いマフラーを2人で巻いた幸せそうな恋人達が2人の横を通り過ぎた。
「……マフラー……あったけぇかな……」
「きっとあったかいですよ。俺達も負けられませんね」
 虚ろに呟いたソーダに、イズトライが謎の対抗心を燃やす。「じゃあ、マフラー買いに行くか」とブティックに向かう2人。

「って、何やってんだ俺ら……」
「……何やってんでしょう」
 正気に戻った2人の心が更に凍えたのは言うまでもない――。
イラストレーター名:笹井サキ