■リヴァイアサン大祭2013『独り身二人のヤケ酒祭り』
「リージェさん今夜は飲もう! もう全部ぱーっと忘れちゃおうぜ!」などとやけくそ気味に、ファイトはカウンターに突っ伏し酒のグラスをあおる。
その隣で、リージェは笑みを浮かべつつグラスを片手に。
「はいっ、ファイトさん。今日はお店のお酒を、全部飲んでしまいましょう」
カウンターの前には店中の酒がずらりと並ぶ。その色もとりどり、瓶の色や意匠も、これまたとりどり。
猫が刻まれた酒瓶の、鮮血のような赤いリキュール。
まるで水のような口当たりだが、下手に呑むと酒豪でも二杯で気絶してしまう醸造酒。
気味の悪い青色の発泡酒。
口に含んだだけで頭蓋骨が砕けそうな、琥珀色の濃い蒸留酒。などなど。
さらに、グラスに注がれたカクテル各種。ファイトはそれらを端から手を付け、グラスや瓶を空に。強烈なアルコールに当てられ、ファイトは失意の……というか、独り身ゆえのヒガミ根性の雄たけびをあげていた。
「ちくしょー! いいもん俺恋人いなくても幸せだもん!」
きっかけは、些細な事。
リヴァイアサン大祭にて、周りがカップルだらけで憂鬱なファイトが、リージェを誘ったのだ。「この気持ちを吹き飛ばすため、飲み明かすんだ」とばかりに。
かくして、大衆酒場へレッツゴーしたファイトとリージェ。そこのカウンターに店で供してる酒全種類を注文し並べ、端から呑みまくっているわけだが……。
「ファイトさん、あまり飲みすぎると明日に響きますよ?」
リージェの声が耳に届くが、ファイトはそんな事お構いなし。
「うー、明日がキツくったっていいや……うげっ、この酒苦っ」
薬草から作った醸造酒を飲みほし、顔をしかめるファイト。
「いいもん、いまが楽しけりゃ……苦くない酒追加ー! リージェさん乾杯!」
何を言ってるかわからないが、正直どーでもいい。今だけは、アルコールが提供するかりそめの安らぎに漂っていたい。簡単に言うと、酒でつらい現実忘れたい。
「はいはい、朝までお付き合いいたしますよ」
苦笑交じりに、リージェのそんな言葉が聞こえたような気がする。ついでに彼女の周りに空いたグラスも増えた気がする。
……いや、飲み過ぎた? なんだか、視界がブレてるような……。
「でも俺、良かった……」
去年は一人ぼっちで、本当にさびしかったんだ。
けど今年は、リージェさんが傍にいてくれて、去年のような寂しさを感じずに済んだ。
その日は、そのまま二人で飲み明かし。次の日。
ファイトは二日酔いに苦しみ、一日ベッドの上に。
「……でも、あの時」
酔いつぶれ、記憶が飛ぶ寸前。
「ふふ、私の方こそ、誘っていただいてありがとうございます」
リージェがそう言ってくれたような、そんな気がした。