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2人でリヴァイアサン大祭

聖者の右手・キリク
陽だまり農婦・アリス

■リヴァイアサン大祭2013『光陰矢の如し』

「いい湯だ」
 寒空の下、露天風呂にて。キリクは湯につかりつつ、周囲の景色に視線を向けていた。
 湯は熱めだが、それがまたちょうどいい。寒風が、湯に当たり火照った頬の熱を冷ましてくれる。
 この温泉は、混浴。そして、キリクとともに湯に浸かっているのは、彼の義妹・アリス。

「兄様! 混浴ッスよ、混浴!」
「マジで? よーし、久しぶりに背中の流しっこでもすっかー」

 などと言いながら、兄と妹は温泉に。
 今日は義兄妹水入らずで、温泉に。
 普段から、アリスには苦労をかけ……られてる気もするが、可愛い義妹を労うのも、義兄としては当然。
「いやー、気持ちいいッスねー、兄様―?」
「え? ……ああ、そうですね。はい」
「どしたんスか?」
「いや、なんでもない」
 アリスが湯船の中。キリクへとすり寄ってくる。
「顔、真っ赤ッスよ?」
「あー……まあ、ほら。湯が熱いからなー。ちとのぼせたかなー」
 
 確かに、熱い湯にのぼせそうなのは事実。
 しかし、それ以上に。目前の義妹の肢体が血流を良くしているのは事実。混浴とはいえ、アリスは水着で入浴しているのだが……それでも、その……豊かな胸の双丘と、形の良い大きな尻を隠しきれはしない。
(「きっ、聞こえる? なんで聞こえるんだっ」)
 そう、キリクの耳には聞こえていた。響くはずのない音……巨乳がふりふりと揺れる時、なぜか聞こえてしまう(気がする)『音』が。
『ばいん』とか『ぼいん』とか、『ぽよん』とか『ぷるん』とか。そういった柔らかなものが震える時の擬音っぽい音が、キリクの耳には確かに聞こえていたのだ。欲情ゆえの気のせいかもしれないが。浴場なだけに。
「……大山脈です」
 などと、アリスの胸を見つつ口走ってしまい、キリクはしまったと思った。
「? ……ああ、そうッスね! あっちの景色、ほんとに大きな山脈ッスよね!」
 しかし、当のアリス本人はそんな事は全く考えになし。無邪気にその魅惑的な果実をゆさゆささせながら、清楚な笑顔を浮かべている。それがまた、キリクの『何か』を刺激してしまう。
「おっ、落ち着け俺!」
「ほら兄様! あっちの方の景色もすごく良い感じッスよ? あっちまで行きましょう!」
 湯船からぐっと手を取り、アリスはキリクをひっぱった。
 無理無理今ちょっと動けない! ……などというキリクの心の声など、アリスの知る由も無い。
「ちょ、ちょっと待って……うわわっ!」
 前かがみのへっぴり腰で立ち上がったキリクだが、その姿勢が災いしてつるっと滑る。
「兄様? あわわわわっ!」
 そして、キリクはアリスへと倒れ込んだ。その顔を、アリスのお尻に押し付ける形で。
 
「いたた……。兄様、大丈夫ッスか? 鼻血、出てるッスよ?」
「あ、ああ……大丈夫じゃないが、なんとか、大丈夫だ。色々な意味で」

「また一緒に、お風呂入りましょうッスね! 兄様!」
 出る時。
 笑顔でそう言うアリスに。返答できないキリクだった。
イラストレーター名:鯖田ユキ