■リヴァイアサン大祭2013『聖夜の雪空に、温もりを重ねて…』
女の子である事すら明かせなかった彼女に、女の子の幸せをあげたい……そんな風に思った事が、全ての始まりでした。「あれ、カルミアさん?」
賑やかなパーティを抜け出して、カルミアがベランダで佇んでいるのをエリックが見つけた。
「あ、エリック君」
「どうしたんですか、こんなところで」
「うん、リヴァイアサンが綺麗だなって思って……ねえ、エリック君。一緒にここに座らない?」
カルミアが指し示したのは、ベランダの手すり。
少し危ない場所だが。
「いいですよ。でも、気をつけてくださいね?」
「うん、エリック君もね」
二人はひょいっと飛び乗り、手すりに腰掛ける。
と、同時に今度は、ちらちらと白いものが空から落ちてきた。
「あっ……エリック君、雪っ! 雪だよっ!」
はしゃぐかのように空を指差し、カルミアは叫んだ。
「ええ、雪ですね……」
今でも『それ』を為せているかわからないけれど……でも、この綺麗な夜空を見上げながら幸せな気持ちでいてくれるなら嬉しい。
そう思いながら、そっとエリックは彼女の手の上に、自分の手を重ねた。
(「カルミアさん、貴女は今、何を思っていますか?」)
郵便配達をしているカルミアにとって、雪自体はあまり好きではない。
だが……。
毎年来るこの夜の雪だけは、特別だった。
いや、今年はもっと好きになったと感じる。
エリックがいて、シアがいる。
そんな暖かな幸せに、リヴァイアサンのキラキラした姿と共に、舞い降りてくる雪が祝福しているかのようだから。
重ねられた手にドキリとしながらも、カルミアは心の中で彼に尋ねた。
(「ね、エリック君。君はこの雪空を見て……何を思ってるかな? 同じように……きれいだな、なんて見てくれてたら……何だかうれしくなりそうだよ」)
二人は互いに顔を見合わせて、にこりと微笑む。
この二人だけのささやかな時間を過ごそう。
雪が祝福するかのような、幸せなこの時間を、少しだけ長く感じられるように。