■リヴァイアサン大祭2013『ケーキより甘い1日』
今日は年に1度、星霊リヴァイアサンが空を舞う日。エルフヘイム各地で様々な変化が起こり、それを楽しむ様々なイベントが開催されるリヴァイアサン大祭。2人が大祭を共に過ごすのは今回で2回目。
「祝い事はやっぱりケーキだろ!」
そう瞳を輝かせたトウキの提案で、ニスラフの村の蜜の流れる小川をすくってケーキを作る事にした。
2人で作るのは、ソラリスの好きなチョコケーキ。2人ともケーキ作りの経験はないが、「経験なくても、二人で作ればなんとかなるだろ!」と、和気あいあいと他愛もない話をしながら手を動かす。
(「トウキは……このケーキを喜んでくれるかな」)
甘過ぎないよう仕上げたチョコレートケーキを見るソラリスに少しの心配が浮かんだ。そこへトウキが、鼻歌混じりに果物や砂糖菓子を、『ありがとう』と『好き』を沢山込めて飾り付ける。
(「試しにちょっと幸せを確認……っと」)
――ペロ。
トウキが少しだけチョコクリームを指で掬って味見。
「……うん、味も完璧だ!」
ソラリスとトウキは、2人で作ったケーキを持って帰ってきて食べる事にした。並んでソファに腰掛け、ケーキを食べながら穏やかで楽しい時間を過ごす。
「うん! 美味い!」
ケーキを口に運んで満足そうに笑うトウキ。
(「……眺めているだけより一緒に色んな事をする方が楽しい、と何度も教えてくれたのは……隣にいる君だったね……」)
ソラリスは、ワイングラスを傾けながら、2人でケーキを楽しく作った事を思い浮かべる。
「けどよ、お前への想いを詰め込み彩ったが、全然まだまだ足りねぇな……なぁ、ソラリス。他は何を飾りたかった?」
笑顔だったトウキが、ぼそっと、少し不満げな声を出した。
問いかけに視線を動かしたソラリスの目に、トウキの口元のチョコクリームが目に付く。
「……顔についてるよ」
ソラリスは、くすっと小さく笑い、口元のクリームを指ですくい取って――、
「え!?」
ソラリスの指の行方にトウキが目を丸くした。
クリームを乗せたソラリスの指は、そのままソラリスの口の中へ吸い込まれていったのである。
照れ屋な恋人が、こんな事をするとは思わなかったトウキの心臓はドキドキとうるさい程に鳴り響いた。
ソラリスは、そんなトウキを微笑ましく見つめて、のんびりと凭れ掛かり、
「……この雪の結晶みたいに決して溶けないものも、見えるところに飾ろうか……」
先程トウキから贈られた、ガラスでできた雪結晶の襟飾りを出し、静かに瞳を閉じる。
(「……この先も」)
閉じた瞼の裏に、強い想いを込めて――。