■リヴァイアサン大祭2013『こんな感じの結婚式に……?』
――雪の広場の一角。「お待たせしてしまいました?」
急いで走ってきたであろうナールディアが、白い息を荒げながら申し訳なさそうに苦笑する。
「ナールディアのためだったらいくらでも」
ダグラスは柔らかく微笑んで、愛しい恋人を迎えた。
「……そうじゃないでしょう」
ナールディアは、ぼそっと小さく呟く。先程までは申し訳なさそうにしていた顔も、今は不満そうに目が据わっていた。
「え?」
何の事だか分からないダグラスは、不安げに戸惑う。
「そこは『ううん、僕も今来たところ』じゃないんですか……何も、正直に待たされたと言わなくてもっ!」
ナールディアの緑の丸い瞳はつり上がり、負けず嫌いな彼女らしいハキハキした物言いになった。
「……ぅ……あ、ご、ごめん……」
その迫力に気圧されるようにダグラスが謝る。今度申し訳なさそうにするのは彼の番になった。
「ダグラスさんにそういう機微を求めても仕方ない事は知っておりますが……」
はぁ、と小さな溜息を吐いて軽く落胆するナールディア。
(「やっぱり私も恋する乙女にさせて欲しいのです……」)
成人したら、すぐにでも結婚を、と思っている彼女の心に不安が立ち込めた。
――結婚式の晩。祝福の空気に包まれたダンスホール。
ナールディアの求めに応じるダグラス。ダグラスの求めに応じるナールディア。二人はいつまでも踊り明かす。ずっと。この夜が明けても、何年経ってもずっと二人で――。
(「私もダグラスさんも、そんな素敵な未来を願っている……」)
「……というのに!」
「え? え?」
ダグラスの頭にクエスチョンマークが乱舞した。何が「というのに」なのか、イマイチ理解できなかったから。
(「悪気がない事はわかっております……けれど少しくらい、ロマンティックな雰囲気を演出して下さってもいいでしょう!?」)
ナールディアは諦めつつも、少しだけ恨みがましく軽く睨んでしまう。
「んまぁ、あまりガミガミ言っても仕方ありませんので……」
ナールディアの口から溜息共に吐き出される言葉はそこで一旦終わりを告げ、
「せっかくのお祭りです。楽しみましょう!」
明るくダグラスに笑いかけた。
ダグラスを尻に敷くのは楽しくもあるし、ダグラスも楽しんでいるような気はする。しかし、偶にはダグラスから男らしいところを見せて貰いたい、そんな複雑な女心を抱くナールディア。
(「結婚までは、あと二年とちょっと……その時までには、もう少し女心を上手く操れるようになって下さいます……よね?」)