■リヴァイアサン大祭2013『Blooming in the white』
「さすがに冷え込むさねぇ。寒くないかね?」アセルスが白い息を吐きながら問い掛ける。
「ふふ、アセルスさんがいるから問題ないよ!」
その問いに、楽しそうな笑顔で答えたジークリット。
「そ、そうか……?」
(「隣を歩いているだけだが、それで何か温かいのか?」)
寒そうに身を縮めながら歩くアルセスは、少し不思議そうな表情を浮かべる。自分が持っているフレイムソードか? などと思うも、そんなわけはない。
「ひとつ提案があるんだよ!」
「ん?」
ジークリットが明るく楽しそうに笑いかけると、アセルスが先を促した。
「……マフラー、巻かないかな?」
じゃーん、とジークリットが赤いマフラーを取り出す。随分長いマフラーだ。1人で巻くには長く、2人で巻いて丁度良いくらいの。
「いいぞ? こっち寄れよ、ジーク」
意図を理解したアセルスは、軽く微笑んだ。
正面から向き合って、へへっ、と楽しそうに笑いつつも少し照れているジークリットが、最初は丁寧にアセルスに巻く。次に、長く余らせていた方を自分に巻いた。
「ど、どうさ?」
アセルスが、少し照れくさそうにしながら口を開くと、
「うん、あったかいね!」
ジークリットの明るい満足そうな笑顔が返ってくる。「なら、いい」と頷いてまた歩き出した。
「なぁ」
何かを考え込むような、口に出すのを迷っているような雰囲気でアルセスが口を開く。
「なんだい?」
ジークリットが、きょとん、と首を傾げた。
「いや、なんだ……嫌だったらやめる、が」
アセルスは、そんな彼女から目を逸らし、そっと手を握る。
「ふふ、ふふふ!」
一気にテンションの上がったジークリットが、今まで以上に、更に楽しそうな笑い声を上げた。
(「変なスイッチでも入ったのか……?」)
少し不安そうな顔をしたアルセスが、恐る恐る声の主を見る。
「アセルスさん、楽しいね!」
満面の笑みを広げるジークリットは、握られた手をぎゅっと握り返し、急に走り出した。
「ぐ、ちょ……締ま、ジーク首締まる……!」
アセルスは、少し顔をしかめながら締め付けるマフラーと首の間に、塞がってない方の指を入れて、少しでも締め付けを緩めようとしながら、慌てて追いかける。
「あっはは! 大丈夫だよ! 呼吸止まったら人工呼吸するから!」
ジークリットは、声を上げて楽しそうに笑いながら、はしゃいだまま止まらない。
アセルスに浮かぶ苦笑は、嫌がっているとは全く感じられず、逆に楽しんでいるようだった。
「大好きだよ、アセルスさん!」
「だ、から……ああもう、あたしも大好きだよ!」