■リヴァイアサン大祭2013『聖なる夜の小さな冒険』
リヴァイアサン大祭の特別な夜、エルフヘイムでは不思議なことが色々起こる。雪が降り続く空、温泉に変わる泉。流れる水が甘い蜜になる小川……。
そして、エルフヘイムを散歩していたエルスとステラは、不思議な光に導かれるように、いつの間にか深い森の奥に入っていた。
「どうしよう、このままじゃ迷子になってしまう、かも」
ステラが呟くように言う。
他の人達、2人の友達も、自分達のようにさまよっていたりするのだろうか。
「大丈夫、きっと大丈夫」
エルスは小さい声で言うと、そっとステラの手を握った。
「うん、信じるよ」
ステラはエルスの顔を見て、少し恥ずかしそうに笑む。手を繋いだまま、2人は森を歩き出した。
木々の隙間にはキラキラときらめく金色の光。まるで幻想の中にいるようだ。
「……ん、何だか甘い香りです……」
歩きながら、ふとエルスが目を閉じて、すん、と香りを嗅いだ。
お菓子のような匂いが、どこからか漂ってくる。
ランプを片手で掲げながら、2人でその匂いを辿っていくと、やがて目の前に小川が姿を現した。
黄金色の、蜂蜜の川がさらさらと静かに流れている。
「わ……」
甘い甘い香りと、柔らかく輝く透き通った流れ。思わず2人は小川に見惚れた。
「綺麗、だね」
「リヴァイアサン様の贈り物ですね」
エルスとステラは顔を見合わせて微笑む。
この蜂蜜の川に沿って歩いていけば、きっと出口が見つかる。そんな気がした。
甘い香りと、黄金色の川のせいだろうか。先程までの不安が、夜霧のように消えていく。
心が落ち着いた2人が改めて周りを見ると、不思議な光を灯す森は神秘的で、とても綺麗だった。
「少しゆっくり、のんびり歩きましょうか」
「そうだね。もう少し、この景色を見たい、ね」
光に包まれながら、歩く。
1年に一度だけの光景。リヴァイアサンの奇跡……リヴァイアサンの贈り物。
やがて目の前が開け、2人は森の出口に辿り着いた。
「良かった……」
「ですね」
ステラがほっと息をつくと、エルスもにこりと頷く。
2人を見守る、金色の香りと、優しい光を灯す森。何だか嬉しくて、エルスとステラは共に空を見上げる。
無限に広がる空を、星霊リヴァイアサンが白い雪と共に舞っていた。