■リヴァイアサン大祭2013『ダンスでパニック!』
1年に1度、リヴァイアサン大祭の日にだけ出現する氷の宮殿。不思議な事に、全く寒さも感じない。その宮殿のダンスホール。フロアも柱も全てが氷でキラキラと輝く特別な空間。
「お嬢さん、踊っていただけますか?」
ドレッシーな民族衣装で身を包むフェーンが、優しい笑顔で手を差し出した。
その手と視線の先には、あちこちに羽飾りがあしらわれた民族衣装風のドレスのエルドジェイン。がっちがちに固くなって、顔も真っ赤。寒くはない場所であるので、それは寒さ以外の原因で。しかも視線は不安定に泳いでいる。
「あー、ええと、こういうときは……よろこ、ん、で?」
エルドジェインは、緊張で震える手を、差し出された手に恐る恐る乗せると、ふわりと優しく包まれた。そのぬくもりに、包まれた手まで赤くなる。
「では……」
その様子を微笑ましく見守るフェーンは、エルドジェインの手を引いて、楽しげな音楽の中に彼女を導いた。
顔を真っ赤にしているエルドジェインの動きはぎこちなく、
「もっとリラックスして下さい」
フェーンが小声で優しく囁く。
「え、えと……は、はい……」
それでもエルドジェインの動きは固いままで。緊張している上に、慣れないドレスで裾を踏まないように必死だ。
「わあああああっ」
必死に踏まないよう気をつけていた裾を踏んでしまい、つまづいて転びかけたその時――、
「おっと、大丈夫ですか……」
今までより近くで聞こえるフェーンの声。顔に感じる体温。
(「ぇ……? 痛くない……?」)
緊張で固まっていたエルドジェインの思考は、状況を理解するのに少し時間がかかった。自分はドレスの裾につまづいて転んだのでは? なのに、体のどこにも痛みがない。
(「……えええええ!?」)
そして、やっと理解する。フェーンが抱きとめてくれて、その腕の中にいるのだと。その状況に気がつくと、エルドジェインの思考は働くのを止め、意識を手放した。
「……あれ?」
フェーンは、腕の中でぐったりとして動かないエルドジェインに首を傾げる。
(「……どうしましょう……」)
腕の中の眠り姫をどうしようか暫く悩んだ彼は、そっと抱き上げて控え室に運んだ。