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2人でリヴァイアサン大祭

春月花・セシル
地獄絵図・ノイズ

■リヴァイアサン大祭2013『犬ぞりはスリル、ショック、サスペンス?』

「ノイズ、早く早くーっ」
 複数の犬達に囲まれる中心で、セシルが手を振っていた。
 犬達は随分とセシルに懐いているようで、撫でてくれと頭を足にこすりつける犬もいれば、飛び掛って尻尾をぶんぶん振っている犬もいる。
「そんなんで大丈夫か? ……おい、遠慮なく急勾配を攻めろよ」
 セシルを微笑ましく眺めつつ近付いたノイズは、行儀良くおすわりをしながら待機していた犬を撫でた。
『わふ』
 ノイズに撫でられた犬は、まるで「任せとけ」とでも言うように尻尾を振って返事をする。
「急勾配?」
「急な斜面ってこと。急斜面を一気に行くんだ。きっと気持ち良いぞ?」
 聞きなれない単語に首を傾げるセシルに、ノイズは期待に瞳を輝かせながら説明した。
「よし、行くか」

 力強く風を切ってソリを引く犬達。2人が乗るソリの周りは雪煙を上げて疾走する。
「気持ち良いー!」
 1年ぶりの感覚にセシルが歓声を上げた。
(「甘党としては小川の蜜も捨てられませんが……」)
「犬ぞりも最高です……!」
 年に1度のこの日にだけ、甘い蜜が流れる小川がある。そこで甘い蜜でパンケーキを食べながら、甘い甘い時間を過ごすのも悪くない。しかし、やはり折角の雪。力いっぱい遊びたい。こんな風に――。
「待ってました急斜面」
 ノイズが瞳をキラリと輝かせて、ニヤリと口端を上げる。
(「い、いよいよ急斜面……去年で耐性は付いたから大丈夫な筈……!」)
 セシルがぐっと気合を入れた。
 ソリはぐんぐん速度を上げて行く。
「……あら? スピードが、想像していたよりも速いんですが……これ、走ると言うより落っこちていると言った方が正しいような……」)
「……これは崖だな」
 セシルの顔がだんだん青くなっていくと、ぼそっとノイズが呟いた。
 冷たい風は顔に突き刺さり、雪煙は更に大きく舞い上がる。
「きゃぁああああっ!」
 セシルは悲鳴を上げながら、ノイズにしがみ付いた。
「スリル満点過ぎ!」
 逆にノイズは、上機嫌になって瞳を輝かせ、テンションがうなぎ上り。

 ――ぼふっ!

 今まで以上に盛大に舞い上がる雪煙。
「な、何とか生きて到着……」
 げっそりと青い顔をしたセシルが、ほっと息を吐きながら口を開いた。
 お互いの無事を確認するべく、横にいる筈の大切な人を確認して――同時にふきだす。
 舞い上がる雪煙に全身真っ白にデコレーションされていたのだ。
「大丈夫だった? オレは楽しかった、セシルの叫び声とか可愛かったし」
 ノイズは、セシルの雪を払ってやりながら、楽しげに微笑む。
「もう……」
 セシルは、少しむくれたように苦笑して、でも、ノイズの手は優しくて温かくて幸せで――。
「ノイズも雪まみれですよ」
 雪ですっかり冷えてしまったノイズの頬を温めるように雪をはらって、そっと唇を重ねた。
イラストレーター名:おこげ