■リヴァイアサン大祭2013『Volonte.』
藍色の空から純白の雪――。――ひやり。
悪戯な雪の妖精がリウェスの鼻先に舞い降りた。
「ふふ……」
その冷たさにも頬を緩め、サクサクと足から伝わる感触にも瞳を輝かせる。
夜目が利かないリウェスだが、そんなことは全く気にならない。
「ゼル」
くるりと振り返り、傍らから静かに聞こえていた足音に笑いかけた。
「どうした?」
無邪気なリウェスを眺めていたゼルアークが口を開く。親のような、兄のような、そんな優しい眼差しで。
この楽しい気持ちをどうやって彼に伝えようか、彼も一緒に楽しんでくれるだろうか、そんな事を考えていたリウェス。
――どん!
リウェスがたくましいゼルアークの体に体当たりした。突然の事で体勢を崩したゼルアークは、リウェスを受け止めながら雪の上に倒れこむ。2人を優しく受け止めた雪が、ふわりと舞い上がった。
「あはは!」
舞い上がる雪とともに、リウェスの明るい笑い声が上がる。
舞う粉雪も、その冷たく柔らかい感触も、どれも楽しくて、楽しくてしかたがないないのだ。
「やれやれ……」
ふと、楽しくて上機嫌だったリウェスの耳に溜息混じりのゼルアークの声が入る。
(「おこってる……?」)
肩を竦めながら恐る恐る上目遣いに声の主を見た。しかし、変わらず優しい色を浮かべる琥珀色の瞳。
「全く、お前は」
苦笑を浮かべたゼルアークが、ピンっとリウェスの額を指で軽く弾いた。
「ぅー……」
リウェスは小さな痛みの走る額を擦る。すると、大きな手が優しく彼の頭を撫でた。
「ふふ……」
甘やかされているのが分かるリウェスの頬がまた緩む。
「ねえゼル、つめたいね」
「そうだな」
リウェスが、体の下に大きくて頼もしい温もりを感じながら笑いかけると、ゼルアークも優しい笑顔を返した。
「でも、あったかいね」
リウェスが今着ている、守護者が着せてくれた服は、夜中遊んだって冷える気がしないくらいに温かい。――目の前の存在と同じくらい。
それでも、外気に触れる顔が感じる冷たさ。吐く息が白いのさえ嬉しくなってしまう今日。
「今日だけは、許してね?」
全部が楽しい、特別な日だから――。