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2人でリヴァイアサン大祭

移動菜園管理者・エリック
白と黒の千変万化・シルヴィーア

■リヴァイアサン大祭2013『暖かい時間』

 空から舞い落ちる雪が街路を白く染め上げ、道行く人々を凍えさせても、一歩建物の中へと入ってしまえば、外套を脱いでも差し支えないほど暖かい。
 旅団の仲間やその家族、友人たちはエリックがよく利用している宿の一階を貸し切り、リヴァイアサン大祭の夜を楽しんでいた。既に酔いの回った仲間たちは幾度となく乾杯を繰り返し、部屋には賑やかな声が満ちている。料理を片手に会話を楽しむ者もいて、彼らの様子をぼんやりと眺めながらシルヴィーアは小さく微笑んでいた。
 今年は一年、どうやら無事に過ごすことができた。この仲間たちと新しい年を迎え、来年も良い年になればよいのだが。
 そういえば、エリックはどうしているだろう。
 ふと気になってここを定宿にしている少年の姿を探すと、先ほどまで友人と来年のことなど話し合っていた彼は、暖かな暖炉の前に席を占めていた。そっと近づいて顔を覗き込んでみれば、目を閉じたまま頭が上下に揺れている。この日の祭を楽しみにしていたというのに、部屋を暖める炎の誘惑に負けてうたた寝を始めたらしい。
「あらあら、こんな場所で寝ちゃったら風邪引いちゃいますよー?」
 耳元に囁くように声をかけてみると、エリックは睫毛を微かに揺らしたものの、覚醒する気配はない。
「うにゅ、シアさん……」
 舌足らずに小さな声で呟いただけで、子供がむずがるような仕草を見せた後、そのまま再び寝息をたて始める。
 唇からは寝息に紛れていくつか言葉がこぼれていたが、それも寝言で、もはや完全に夢の中で遊んでいるようだ。無理に起こすのも可哀想だと思い、シルヴィーアはくすりと小さく笑うと、宿から毛布を借りてきて寝ているエリックにかけてやった。
「大分大人っぽくなってきましたけど、寝顔はまだまだ可愛いですね……」
 あどけなさの残る寝顔を覗き込み、笑みを含んだ声で呟く。時折、今は見えないその緑色の瞳の中に、はっとするほど強い光を見て、随分大人になったのだなと感じることがある。けれどこうして寝顔を見ると、まだまだ子供らしさも混ざっていて。起こさないよう気をつけつつ、その白い頬を指先で軽くつっついて、シルヴィーアは優しい笑みを浮かべた。
「来年はどうなってるんでしょうね……」
 ただの友人、というには少し躊躇いのある関係だ。けれど、はっきりと恋人と呼べる仲でもない。そういう自分たちの関係は、少しは変わっているだろうか? 来年のこの日に見るエリックの顔は、今より更に大人びたものになるのだろうか。
 新しい年の自分たちのことに思いを馳せつつ、シルヴィーアはそっと、まだ幼さの残るエリックの頬に口づけた。
イラストレーター名:夏川