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2人でリヴァイアサン大祭

常夜の歌姫・ヤト
花の妖精騎士・ウェンディ

■リヴァイアサン大祭2013『光降る夜空を見上げて』

 静かに降り続く雪は全てを覆い隠し、音すら飲み込んでしまう森の中。
 ――サク……サク……。
 賑やかな街の声も届かない静寂の中、雪を踏み歩く2つの足音だけの森。
「ここなら良く見えそうね」
 木々に灯る柔らかい光に導かれるように、開けた場所に辿り着いたヤトが微笑む。
 この森は、リヴァイアサン大祭の夜にだけ、不思議な光を灯し、森を照らしていた。
「はい、きっと素敵な眺めが見れると思います」
 ウィンディも笑顔で頷いて、2人は大樹の根元に腰を下ろす。夜の森、しかも雪が降っていれば相当に寒く、自然と距離を詰めて。
 ヤトは、持ってきた小さなポットとカップを取り出し、ふわっと湯気が昇るココアを注いだ。
「マシュマロはいくつ?」
「3つでお願いします!」
 ヤトが訊ねると、ウェンディが瞳を輝かせて答える。
 その答えを聞いたヤトが、カップにマシュマロを3つ浮かべた。
「はい、3つね」
 微笑んでウェンディにカップを手渡す。
「ありがとうございます」
 ウェンディが嬉しそうに微笑んで受け取ったカップは温かく、ふわふわ揺れる湯気は、甘いココアの香りを届けた。
 そんな彼女を微笑ましく見つつ、自分の分のココアをカップに注ぐヤト。
「そう言えば、ここってウェンディの森って名前なのよね?」
 温かいカップを両手で包むように持ち、柔らかい笑顔でヤトが口を開いた。温かいココアが寒さで強張った顔をほぐすような柔らかい笑顔で。
「はい、光栄ですが……やっぱり恥ずかしいです」
 ウェンディは、少し照れたようにカップに口をつける。その様を、くすっとヤトが小さく笑った。つられるようにウェンディも笑い、2人の小さな笑い声が響いた。
「でも、本当に綺麗な森ね」
 光の灯る木々に照らされた雪が輝いて、とても幻想的で美しい森。光の一つ一つに妖精が宿っているような不思議な森。
「はい、とっても。私などの名前が冠されているのが申し訳なく思います」
 小さく苦笑するウェンディ。こんなに美しい森にどうして自分の名前が冠されているのか。記憶と力を失ってしまっている彼女には、それが分からない。
「あら、そんな事無いわよ」
 ヤトがにっこり微笑んで、
「ウェンディもまた花の妖精のように素敵」
 歌うように優しく微笑んだ。
「……光栄です」
 苦笑していたウェンディの表情は、少しだけ頬を染めてはにかんだ笑顔を浮かべる。
 微笑み合って、ふと空を見上げると、2人の視界に丁度、夜空を駆けるリヴァイアサンが映った。
 リヴァイアサンに見惚れる2人の口からは、白い息と共に溜息しか出ない。
 ただただ、その壮大な景色に魅入っていた。
イラストレーター名:友憂希