■リヴァイアサン大祭2013『I'm lovin'you. It's true…』
静かに降り注ぐ雪が建物や街路樹を真っ白に染め上げていく――。「綺麗だね」
水路に架かる橋から、幻想的な景色に目を奪われているカミリアが呟いた。
「えぇ……本当に……」
隣で一緒に景色を見ているロシェも、穏やかに微笑む。
「寒いけど、ロシェと一緒にこの景色を見られて本当に良かったよ」
真っ直ぐ前を向いて、優しい街の灯と純白の雪が作り出す一枚の絵を眺めていたカミリアが、ロシェの顔を見て嬉しそうに笑った。
「カミリア……」
ロシェは愛おしそうに名を呼んで、そっと、その手をとる。
勇ましく敵を砕くカミリアの拳は、本当はとても繊細で。料理や裁縫などの家庭的な事が好きな女性らしい手。
「……? ロシェ……?」
カミリアは、愛おしそうに自分の手を見つめるロシェに首を傾げた。そして、ロシェの指先が持っている物に目を見開いて驚く。
『カミリア……愛しています。2年待って、僕と、結婚して下さい。ずっと一緒に、歩みたい』
2人が秋に体験した模擬結婚式で、式は模擬であったが、ロシェから誓われた言葉は模擬ではなく。
「あ……」
その時の言葉を、声を、表情を思い出し、カミリアの瞳には涙が浮かぶ。
ロシェが持っていたのは銀色に輝く指輪。――目に見える誓いの証。
(「あの時誓った事は本当だから……」)
だから、20歳になるまでのあと2年弱の約束を忘れてくれない様にと用意した指輪だった。
その証を、カミリアの冷たい薬指に、自分の魂まで流れていく様に祈りながら、静かに通した。
「……っ」
カミリアの瞳に浮かんでいた涙が、とうとう流れ落ちた。
その涙には、いつも胸を掴まれるロシェだが、それは不快な痛みではなく。
「世界で一番美しいです、カミリア……」
ロシェは、幸せそうに柔らかく微笑む。
目の前で微笑む彼だけの存在になれる幸福を、その傍でずっと歩める約束に、カミリアの想いは溢れて止まらない。
「何度でも言うよ……アタシを愛してくれてアリガト……ロシェ……」
足りないと分かっていても、せめて言葉にしたくて、カミリアは最高の笑顔で口を開く。
「僕も何度でも……僕を愛してくれて有難う、カミリア」
ロシェは、カミリアを優しく抱き寄せ、言葉だけでは足りない溢れる想いを、触れ合う身から直接伝えた。