■リヴァイアサン大祭2013『The Sixth Moonlight Day』
――チンッ。小さな乾杯音が鳴り響く宿屋の食堂。
「とうとう、ここまで辿りつきましたね」
サーシスが微笑んで口を開くと、そのままグラスを傾ける。
「こうして、ここまで一緒に来る事ができたのですね」
頷くリーゼロッテも微笑み、グラスに口を付けた。
「本当に遠くまで来たものです」
遠く離れたエルフヘイムでは、雪が降り続き、星霊リヴァイアサンが大空を舞うこの日。リヴァイアサン大祭が行われている頃だろう、そんな事がリーゼロッテの頭を過ぎる。
丁度1年前の大祭の日、サーシスから指輪を贈られた。その時の金色の指輪は今も彼女の左手薬指で輝いて――。
「あの時の約束のように、ここまで一緒に」
サーシスも思い出すように静かに口を開く。
「……この指輪に何度勇気をいただいたかわかりません」
リーゼロッテは左手薬指に嵌る金の指輪にそっと触れ、1年の間にあった様々な事を思い返して、静かに瞳を閉じた。
共に色々な場所を見に行きたい。彼女のその願いは、きっと変わらないだろう。これまでも、これからも。
「去年のこの日は、この指輪をあなたからいただきました」
まるで祈るようなリーゼロッテに、サーシスが静かに口を開いた。グラスを持つ左手の薬指で輝く銀の光。金の指輪を彼女の指に滑り込ませたら、代わりに自分の指に滑り込んできた銀の指輪。
「その日からずっと、この輝きは僕の手元にあって、 どんなに苦しい時も、辛い時も共にあって……」
大切そうに自分の左手を右手で包んで、静かに瞳を閉じる。
「様々な縁に恵まれたこの一年。どんな時であっても、支えてくださったあなたに、感謝を込めて」
再び瞳を開くと、軽く自分のグラスをリーゼロッテのグラスにチンッと当てた。
「こちらこそ、いくら感謝してもたりません。傍にいても離れていてもいつも私を支えて力をくださったあなたに、愛情をこめて」
リーゼロッテも静かにグラスを鳴らし返す。
「……僕の、最愛のパートナー」
「そう言われますと、少し……照れますね
サーシスは柔らかく微笑むと、リーゼロッテは少しだけ照れくさそうに、でも、幸せそうに微笑み返した。